甘い社員旅行 1

視線の先には、無機質な白い天井。
暖房のきいた薄暗い部屋の中で、一人布団を敷いて寝ている私。
2泊3日の社員旅行のために、都内からバスで約3時間のあるスキー場に来ていた。
なのに私ときたらホテルの一室で一人寝ている。
運悪く旅行の2日前に風邪をひいてしまい久々に高熱が出ていた。

「まだ完全には熱が下がっていないね。ゆっくり休んでないとまた熱がちょっと上がるかもしれないよ」
近くの内科で診てもらった時にお医者さんに言われた。
無理せずに休めば良かったけど私はこの旅行を楽しみにしていたから。
何とか皆と一緒に来たものの、体がだるいので寒いスキー場に行くのは止めておくことにした。
今頃ゲレンデでは、皆子供に返ったようにはしゃいでいることだろう。初心者は上手な人にスキンシップも交えながら教えて貰っているに違いない。

あー暇だな…。もう熱も下がったし、早く滑りに行きたいなー。


‘コンコン’

誰かが入り口のドアをノックする音が聞こえた。

「入るよー。」

同僚の拓也の声に違いない。
私はびっくりして咄嗟に寝たフリをした。

「大丈夫かー?」
「・・・。」

彼は私にそっと近づいて来ると、額と額をくっ付けて体温を測った。

「もう熱はないみたいだな」
「・・・・・・」

そんなことされたら心拍数が上がるってば・・・。
ずっと一人で寂しかったけど、見に来てくれて嬉しい・・・。
ちょっと心が温かくなったその瞬間、唇に何かが押し付けられた。
温かくて弾力のあるそれは、2、3秒経つとすっと離れた。

今のはなに…?
もしかして拓也の唇!?

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

私は高橋奈緒、25歳。
20代後半になり、今の会社に転職することを決意した。
小さな広告代理店で、社員の平均年齢は28歳と比較的若い。
そこで思いがけず、ある人に出会ってしまった。

中学の時の部活の友達で密かに憧れていた。三船拓也。
部活が終わった後によく二人でふざけ合ったり、たまに一緒に帰宅したりもした。
あんた達付き合っているんじゃない?という噂も立ったことがある。
しかし、私には当時付き合っている彼氏がいて結局思いを告げられないまま卒業してしまった。
お互い別の高校に進学し、それ以来会うこともなかった。
思わぬ再会に運命を感じて喜んでいたものの、彼には年上の彼女がいるらしい。
仕事を教えてくれていた先輩から教えられた時は少し落胆した。

拓也との会話は始めはぎこちなかったが、仕事に慣れてくるにつれ徐々にフレンドリーな関係を築けるようになった。

「ちょっとここの表の作り方教えて?」
「こら、会社では俺が先輩なんだから敬語使えよ」

注意されてしまったが、彼の顔は笑っている。
いつか再会して、また昔のような会話ができるようになるなんて、夢にも思わなかった。

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愛しの彼といつもより♡なHを

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