甘い社員旅行 

え?どうして…?

寝ている(ふりをしている)私にキスしてきた拓也に、ただただ驚くばかりだ。
それに彼はまだ枕元にいて、私の髪を優しく撫でている。

「起きてるだろ?」
「・・・・・・。」
「コラ」

拓也は無視を決め込んだ私のほっぺたを軽くつねった。

「痛・・・何してんのよ」
さっき起きたという風に寝ぼけた様子で言ってみる。
「何って、様子見に来たんだよ。どうせ暇してると思って」
「病人になんてことするのよ。・・・それよりスキーはいいの?」
「よくないけどな。俺がいないと奈緒が寂しがってるんじゃないかなって」
拓也は意味ありげな微笑を浮かべた。
「え?誰が寂しいって??」
「またつねるぞ!・・・それより奈緒、キスした時起きてたろ?」
「はぁ?起きてないよ…」

精一杯の嘘をついてみるがグダグダだ。
「顔が真っ赤になってるぞ?」
「うそ!?」
すぐに自分の気持ちが顔に出てしまう性格を少し恨んだ。
上から見下ろされているのが、恥ずかしくなって起き上がる。
「病人なんだから寝てろよ」
「もう大丈夫だから…。それより、彼女がいるのにあんなことして可哀想だよ」
お決まりの言葉を言う私。
拓也は軽い男だったのか?と少し疑いながら…。

「彼女とはもう別れたよ。」
「えぇ?そうなんだ…。それはそれは大変なんだね…」
何が大変なのかよく分からなかったけど、意外な事実を知らされてドキドキしながら私は言った。

「奈緒って好きな人いないの?」
「う…ん、別にいない、こともないけど。」
「どっちだよ。まあ、どっちでもいいや。」
「なにそれ?」

ここではっきりと言えない自分が情けない。
「チューまでしちゃったからな・・・言うよ。俺、奈緒のことが好きだ。付き合って欲しい。」

今、好きって言った?
薬が効いて、気持ちのいい夢でも見ているんじゃないだろうか?

「・・・・・・ほんとなの??」
「嘘ついてどうする」
怪訝な顔で拓也が言うから、私は必死で言葉を選んだ。
「だって・・・ずっと年上の彼女がいたみたいだし…」
「最初はな、ちゃんと彼女のことが好きだったよ。お前が転職してくるまでは。でも、俺の初恋は奈緒だったんだよ」
「そんなの聞いてないよ・・・」

中学の頃の話を今更されても遅い・・・。

「だってあの頃はお前、彼氏がいたから言えるわけないじゃん」
「奪ってくれたらよかったのにー!」
「俺にそんな勇気があったらよかったけどな。好きな人の幸せを願おうとして、身を引いてた。今思えば、友達でいられなくなるのが怖かっただけなのかな。 ・・・で、さっきの返事はどうなのよ?」

返事って?あぁ、告白の返事か。

「え、えーと・・・ぃぃょ・・」
「え?聞こえない。何て?」

蚊の鳴くような声で言った私だが、拓也はしっかりと答えを求めているらしい。
もう、どうにでもなれ…。

「聞こえてるくせに・・・。だから・・・!あたしも拓也が好きだっ…」

最後まで言い終わらないうちに、唇を塞がれた。
ちょっと大雑把な彼の性格からは想像もつかない位の優しいキス。
私は大人しく目を瞑って身を任せた。 唇を軽く重ねるだけのライトなキスが続く。
うっとりしながらも、欲張りな私はさらなる愛を望んでいた。

もっと激しいキスが欲しい・・・

拓也の唇がそっと開いた。

あっ・・・ついに彼の舌が入って・・・


「あ、俺そろそろ戻らなきゃ。」

さっと体を離して言う。
ディープキスされることを期待していた自分が恥ずかしい。

「じゃ、またな」
「うん。わざわざ来てくれてありがと」

静かな部屋でまた一人になり、目を閉じてさっきのことを思い返していると徐々に嬉しさがこみ上げて来る。
今は拓也と両思いになれたことが分かったから、一人寂しく布団で寝ていても心が温まってるよ。ありがとね。

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愛しの彼といつもより♡なHを

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