理想のセックス 2 ある日の夜、直美が浩介の家に行くと大学のクラスメイトの准一が遊びに来ていた。 「おっす。久しぶりだな」 「どうしたの〜?准一が来るなんて珍しいね」 「たまには浩介と飲みたくなってさ」 「ゆっくりしていってね〜」 久しぶりに会えたことが嬉しくて思わず顔がほころぶ。 「おい、ここは俺んちだからな。さっさと飲んで帰れよ」 准一は仲良しグループの中の一人で、浩介と付き合う前はよく二人でカラオケに行ったりショッピングを楽しんでいた。 直美は昔、准一に対して淡い恋心を抱いていたが、バイト先の年下の彼女と付き合い始めて恋はあっさり終わってしまった。 3人でテレビを見ながらビールやチュウハイを飲んでいると、直美の携帯の着メロが鳴り響いた。そっとメールを確認すると准一からのメールだった。 思わず「どうしたの?」と言いそうになったが、准一が目配せして何か合図をしたので黙ってメールを見た。そこには、 「直美と抱き合いたい(笑)」と書かれてあった。 真剣に話すと重く見られるから、あるいは恥ずかしいから「(笑)」をつけたのだろうか。傍には浩介がいるのに、どういうつもりなのだろうか。 すっかり動揺してしまった直美を尻目に、准一は何事もなかったかのように笑いながら浩介の話に付き合っていた。 准一のことが気になって仕方がない。メールを見ただけで、体の奥の方から忘れていた衝動が湧き上がってくるのを感じてしまったのだ。 「トイレ行ってくる」 浩介がリビングの外に出た時だった。 机の右隣に座っていた准一が体を近づけて来たかと思うと、いきなり直美に唇を重ねてきた。一瞬のことなので初めは何が起こったのか分からなかった。 頭が真っ白になるという表現が合っている。静かなキスだったが激しい恍惚感と欲情感が襲ってきて、息苦しくなったのを悟られないようにするのに必死だった。 こんな現場を浩介に見られたら!どんなにか激怒されるだろう。何をされるか分からない。 顔を離そうと首に力を入れたが、准一は直美の頭の後ろを押さえて離れないようにした。 ジャーとトイレの水を流す音が聞こえた。まずい。 純一は素早く体を離し元の位置に戻って缶ビールに口をつけていた。直美もテレビを見るふりをして何とかその場をしのいだが、気付かれないかどうかハラハラして生きた心地がしなかった。 しかし、不思議なことに恋人以外の人とキスしたことの罪悪感はほとんどなかった。相手が准一だったからだろうか。体中が准一への気持ちでいっぱいになっていた。キスまでしてしまうと、次は純一に抱かれることを想像した。 直美はそれからほとんど上の空で二人の話に相槌を打っていた。ぼーっとテレビを眺めるだけで頭は働いていなかった。浩介の携帯が鳴ったのにも気付かなかった。 「もしもし?あ、はい…。今からですか?……大丈夫ですけど?…はーい」 「先輩に麻雀来いって言われた」 「行くのか?」 「ああ、面倒だけど山下先輩の誘い、断ったら怖いからな」 「准、悪いな。行ってくるから適当に飲んで帰って」 浩介はささっと支度するとアパートを出て行ってしまった。 「行っちゃったね。これからどうしようか」 准一はそう呟くと直美の方の背中を抱き、再び口付けを交した。 熱いキスの嵐が降ってきた。さっきされたのと違って濃厚で長い長いキスが。准一の大きくて弾力のある唇が直美を優しく、淫らに包み込んでくる。舌を絡め合い、互いの感触を確かめ合った。 唾液が混じり合い、ぷちゅっ、ちゅっと水音が発せられていた。唇の周りには溢れた唾液がついてしまったが嫌な気はしない。浩介とのキスではこんな風に感じることは出来なかった。 夢中になって准一と口付けを交わしていると淫らな気持ちに火がついた。このまま二人の唇が一つに重なって蕩けてしまいそうだ。 直美は准一への愛しい気持ちなのか淫らな気持ちなのか分からないが、堪らなくなって准一の背中に回していた腕でぎゅっと抱きしめた。 もっと先に進みたい気持ちが自然と沸いて来て、同時にもしそれをしてしまったらどうなるだろうとぼんやり考えた。 キスだけで恋人とのエッチの何倍もの快感を得られたのだから、これ以上のことをされたらおかしくなってしまうかもしれない。 「Hする?」 准一は唇を離すと直美の目を見つめながら囁いたが、直美は混乱して何も言うことができなかった。 浩介は先輩達と一緒に麻雀をやるとなるといつも朝まで帰ってこない。しかし、もしもいつもより早く終わって帰ってきたとしたら…。 「俺、直美を抱きたいとずっと思ってた」 「え?何で…」 軽い男の安易な発言だというのは分かっている。それでも直美はこの疼きを受け止めて欲しい、准一と一つに交わりたいという気持ちの方が激しくなった。 「いいよ」 「ほんとに?最後までやっちゃうよ?」 准一の顔を見つめてこくんと頷いた。 今だけは准一を愛していたい。そして思いきり抱かれて体だけでもいいから愛されたい。 准一は直美に対してある程度好意は持っているだろうが、恋愛としての「好き」ではないだろう。たとえセックスの最中に好きと言われても勘違いしないでおこうと強く誓った。 ←back next→ 愛しの彼といつもより♡なHを 女性のための官能小説・目次 |