大切なお客さんとしてこれからも 1 ≪投稿:Sarah様≫

 これはあたしの、彼氏には内緒の話。
 アメリカに留学に来てもうすぐ半年のときのこと。
 こっちでの生活にも慣れてきて、英語にもあまり困らなくなってきたし、気持ちに余裕が出てきた。
 朝から夕方までは学校で、そのあとすごい量の宿題を近所のカフェで一気にこなす、というのがあたしの平日の日課だった。
 ここのカフェは、店員さんもみんな、感じが良い人ばかり。
 でも、一人いけ好かないヤツがいるんだよね。
 彼は別に接客態度が悪いわけでもない。むしろいつも笑顔だ。 でも、なんかその態度が「俺、かっこいいだろ」って感じを匂わせてる感じがして、なんか好きじゃない。
 まぁ、端からみると確かにモテるタイプなのかも。 顔小さいし、目が青いし、細いけど筋肉質で。そして背が高い。 顔はすごく整ってるわけじゃないけど、可愛い。
 あたしがあまりに毎日通いすぎてるからか、彼もついにあたしのことを覚えたようで、よく話しかけてきてくれた。
 あたしは英語に緊張したり、こいつ勘違いするなよ、なんて警戒しながらも、 気づいたらだんだん彼との会話を楽しむようになってきてた。 話してみると意外と真面目そうだし。 気づいたら、ここに来て彼に会うの自体が楽しみになってたかも。

 カフェに長くいると効きすぎた冷房で体が冷えてしまう。
 トイレも近くなって、しょっちゅう席を立ってたんだけど、 トイレに行くたびにカウンターの前を通らないといけなくて、「彼にあの人、トイレ近いななんて思われたらイヤだな…」 なんて思いながら通り過ぎてた。
 あるとき、トイレから出てくると、ちょうど向かい側の男子トイレから、彼が出てきた。
 トイレから出てきてばったり、というのが恥ずかしくて、あたしは照れ隠しにちょっと笑った。
 その瞬間の彼に、いつもの笑顔はなかった。 彼はあたしの腕をつかんで、女子トイレに再び押し込み、自分も入ってきてカギを閉めた。
 あたしは驚いて声も出なかった。
 もしかして、レイプされる…?
 留学前にあんなに、気をつけろといわれてきたのに、ここへ来て気を抜いたあたしが馬鹿だったか、と思った。

 でも彼は、びくびくするあたしに 「ごめんね、こんな形で閉じ込めちゃって、ごめんね。びっくりしたよね」 と謝った。
「でも2人になりたかった。ここで2人になるには、こうするしか思いつかなかったんだ」
 あたしの目をまっすぐに見つめ、真剣に話す彼。
 アメリカ人がみんなそうだとは知ってても、彼の瞳に吸い込まれそうだった。
 彼はあたしをそっと抱きしめた。男の子の香水のにおいがうすく、ふわっとあたしを包んで、胸がきゅん、とした。
「ずっとこうしたかった…初めてここで君をみたときから、可愛くて仕方なかったんだ」
「でも、あたし…」
 実はあたしには、ここで出会って付き合い始めたてっくんという彼がいる。もしこんなことが寮でうわさにでもなったら、てっくんの耳にも絶対入っちゃう 。
「知ってるよ。彼氏いるんだよね。ときどき一緒に来てるもんね」
 全部見てたんだ、彼は。あたしが誰と来てるかとか…
「彼と君の間を邪魔する気はないよ。ただ君がホントにかわいくて…」
 あたしを抱き続けたまま、彼は言った。
「一度だけ、ちょっとだけキスしてもいいかな?アメリカ人のあいさつだと思って、受け入れてくれないかな」
 そう言うと、彼は抱いていたあたしのからだを少し離した。
 あたしは黙って彼の目を見た。いいよ、って言いたかったから。
 浮気ってわけじゃない。 でも、彼のこと、あたしもいつの間にか気になってたのは、そして可愛いと思ってたのは事実。
 あたしの目をみて「いいよ」と解釈したのか、彼は唇をそっと、軽く、あたしの唇に触れさせた。
 すっごいかわいい、フレンチキス。
 なんか、甘い初恋の味がした。これでよかったのかも、ってあたしは思った。

  こんな1回くらい… と思った瞬間、今度は強く唇を押し当ててきた。 「!」と思った。でも、あたしを抱く彼の腕は、もう振り切れないくらい強くて、あたしはどうにもできなかった。
 彼の息遣いが、フン、フン…と荒くなっていった。 ペチャッ、ペチャッ、…と音を立てて、彼の舌が口の中に入ってきた。すうっとするガムの味。
 あたしも、気がついたら自分から彼に舌を絡ませて、夢中になってた。
 そのとき、「コンコン」と、ドアをたたく音がした。 外で誰かがトイレの順番待ちをしているみたいだ。 彼もあたしも正気にかえり、あたしは少し乱れた髪を整えた。
 彼がドアを開けて、待っていた女の子に 「ごめんね、彼女のカバンが裏に落っこちてとれなくなっちゃってね」 と変な言い訳をしていた。 女の子も特に疑う様子もなかったし、あたしは自分のいた席に戻り、彼も仕事に戻った。

 席に戻っても、さっきの激しいキスで、あたしのからだは疼いて仕方なかった。 宿題にもまったく集中できない。
 今帰ればルームメイトもいないし、彼のことを思いながら、一人でエッチなこと しようかな… そう思って、いそいそ帰る仕度をはじめた。
 彼もちょうど仕事をあがる時間だった。のかわからないけど、帰ろうとしてた。 あたしに対して気まずかったのか、さっさと、あたしより早く店を出て行った。 あたしも彼に続くように、店を出た。
「待って!」
 店から少し離れたところで彼に追いついたので、あたしは声をかけた。
「あの、さっき…トイレで…」とあたしは言った。 でも、何をその先言おうとしたのか、自分でも分からない。
「あぁ、ごめんねさっきは…もう忘れて。これで、お店にもう来ないとか、しないでね」
彼は笑顔で言った。
 忘れて、って言われても、あたしは忘れられなかった。そして、言ってしまった。
「さっきの続き、してほしい…」
 彼は相当びっくりしていた。 彼は自分では、彼氏がいる女の子、しかもお客に対してやり過ぎたと思ってたの かもしれない。 それなのに、その子が追いかけてきて続きをしてほしいというなんて…。
 あたしって、なんてエッチなんだろう…。
  
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