恋のリハーサル 2

「じゃあ・・・また遊びに来るから」
 そう言い残して翼は帰って行った。
 その後、春菜は家族で夕食を食べたが、皆が団らんしている間もずっとうわの空だった。
 配役のための練習とは言え、翼と恋人同士のようなキスをしてしまい、 いつまでも唇の感触が残っている気がした。
 その夜、春菜を見つめるあの熱い眼差しが夢の中にまで出てきた。
 目覚めた春菜はベッドの中で赤面して悶えた。
「うわぁ・・・やめてやめて・・・・・・」
 男らしくなった翼のことが気にならないと言ったら嘘になる。
 しかし今更、幼馴染を好きになるなんて恥ずかしいし、翼も春菜のことを女友達程度にしか見ていないと思っていた。
 しかも翼は人気上昇中の芸能人。美人の女優さんやアイドルとの共演もあるだろう。付き合ったとしてもどんな苦労があるか分からない。
 大学での出会いを優先した方が現実的だと思い、春菜は翼に対して感じた「 ときめき」は忘れることにした。

 2ヵ月後、春菜は翼が出演しているドラマを見ていた。
「なーんだ。上手くやってるじゃない」
 あの時初めてだと言っていたキスだが、慣れた動作でこなしている。
 翼のファンが見たら、自分がされていることを妄想してうっとりすることだろう。
 人前で恥ずかしげもなくキス出来るとは、さすが役者である。
(これもあたしとの練習のおかげかな・・・)
 春菜は監督もファンも誰も知らない翼の秘密を握っていることを嬉しく思った。

‘ピンポーン’
 突然チャイムが鳴って春菜はびくっとした。
‘ピンポーン’
(やだ、誰もいないんだ・・・)
 両親は今朝から2泊3日の旅行に出かけている。
 テレビの音量を下げて様子を伺っていると、チャイムはしつこく鳴り続けていた。
「こんな時間に誰よ・・・」
 最近は物騒な事件が増えているので春菜は警戒した。
 そーっと玄関まで行き、ドアの覗き穴から目を細めて見ると渦中の人物がそこに立っていた。
 春菜は張り詰めていた緊張が解け、安心してドアを開けた。
「よっ」
 そこにはいつもの一般人の翼がいた。
「どうしたの?」
「どうって遊びに来たの」
 翼は全く悪びれた様子もなく答えた。
「もう9時過ぎてるのに」
「だって、おじさんの車ないじゃん。一人かなと思って」
「・・・あんたはストーカーか」
「そういや、さっきあのシーン見たよ」
 階段を上りながら春菜が言うと、翼は「うわっ」と露骨に嫌そうな声をあげた。
「恥ずかしいから見るなよ」
 部屋に入って、自分のドラマがついていることが分かると、翼はリモコンを探し他のチャンネルに変えた。
「あーあ、見たかったのにぃ」
「羞恥プレイは止めてくれ」
 リモコンを取られまいと離さない翼を見て、春菜は諦めた。元々、翼のキスシーンに興味があっただけで、ドラマの内容をしっかり見ていた訳ではなかった。
「撮影は順調?」
「まあね。もう終盤に入ったけど・・・」
 翼は何か言いたげな様子でじっと春菜を見つめた。
 春菜はふと、今この家にはいるのは翼と二人だけという事を思い出し、意識してしまった。
(何か気まずいな・・・)
「キスシーンが上手くいったのは、あたしのお陰だって感謝しなさい」
 春菜はわざと押し付けがましく言って、反論させようとしたが逆効果だった。
「ほんとそうだな。感謝してるよ」
「・・そ、そうでしょ。あはは・・・」
「どうしたの?元気ないんじゃない?」
 口数が少ない翼は何か思い詰めてるようだ。
「相手役の子好きになったとか?」
 いつもの調子で春菜がからかうと翼が軽く睨んだ。
「違うって。この前言ったじゃん。キスシーンともう一個、問題のシーンがあるって」
「え?」
 しばらく考えると春菜ははっと気付いた。
「もしかして・・・ベッドシーン?」
 翼ははぁーっと息を吐くと答えた。
「そうなんだよ・・・」
「まあ、あんたなら出来るんじゃない?キスだって上手くできてたし。未経験であれだけ出来るのって凄いと思うよ。ほんとに」
 お世辞ではなくて心からそう思っていた事を春菜は言った。
「そうか・・・?」
 それでもまだ不安げな表情を見せる翼を見て、春菜はからかいたくなった。
「うん。何ならまた指導してあげようか?」
 思い切って言った後は胸がドキドキしていたが、それは翼も同様だった。
「え??ま、まじで?」
 二人の頭の中に「ベッドシーン=セックス」が思い浮かんだ。
「今なら親もいないしね。教えてあげてもいいわよ」
 ベッドの上で足を組んで座り、床で寝転がっている翼を挑発した。
「本気かよ・・・からかいやがって。何するか分かってんのか?」
「えっ?」
 翼は起き上がると、余裕の顔で見下ろしていた春菜の唇を奪った。
「んーーー!」
 春菜が驚いて逃げようとしたが翼は春菜の肩をしっかり押さえて離さない。
 熱い舌を差し込み、口腔内をくねくねと刺激した。
 春菜は突然のことに頭が真っ白になったが、翼の強引なキスに次第に流されていった。
 そのうち自分からも積極的に舌を絡ませ、OKのサインを出していた。
 唇を離すと混ざり合った唾液がつーっと糸を引いた。
 (これからどうする・・・!?)
 二人以外は誰もいない家。
 初心な翼は春菜とのディープキスに興奮して、ズボンの前を膨らませていた。
 春菜も奥が熱くなり少し濡れていた。
 こんな状態の二人が途中で止められる訳がなかった。
「本番、やってもいいよ・・・」

 春菜が潤んだ目で翼を見つめると、我慢出来なくなった翼は春菜にキスをしながら服を脱がせていった。
 自身の服もベッドの上に脱ぎ捨てた。
「そう・・・いい感じ・・・。あっ・・・・んんっ・・・」
 最初はただの演技のつもりだったが、春菜は本気で感じてしまっていた。
 大柄ではないが筋肉質の硬い体が春菜を視覚的に興奮させる。
 翼に犯されている・・・。そう思うだけで秘所が熱くなりジワリと濡れるのを感じた。
「優しさと荒っぽさもちょっと出してね・・・」
 翼は春菜に言われた通りに、事を進めていった。
 ブラジャーを取り払うと春菜のふくよかな胸が露わになった。
 恥ずかしさと熱を帯びて、白い肌が少し桃色に染まっている。
 初めて見る女性の裸。
 翼は軽く乳房を押さえて、胸元にキスをしたり、唇でついばむ動作をした。
 遠慮しているのかあからさまに胸を揉んだり、中心には触れようとしない。
 それでも春菜は、翼の懸命な愛撫ともどかしさに今までにない位感じていた。
 触れられた部分全てが性感帯であるかのように、刺激が伝わる。
 どうしようもなく下半身が疼き、太股をぎゅっと閉じたり腰をクネクネ動かしてこの場を乗り切ろうとした。
 翼はふと、春菜の体の変化に気付いて尋ねた。
「それも演技?」
「そっ、そうよ」
「にしちゃ・・・上手いじゃんか」
 翼の何もかも見透かしたような態度に春菜はドキッとした。
 翼はふっと笑うと、硬くなっている春菜の突起を口に含んだ。
「あっ・・・」
 その瞬間、強烈な快感が春菜を襲った。
 翼が舌で乳首を転がすと、限界に来ていた春菜は声を漏らして悶えた。
「あぁっ・・・あっ・・・あんっ・・・」
 春菜の生の喘ぎ声に興奮した翼も最後まで「演技」として耐え切れるか不安だった。
 鼓動が高まり、息は荒くなり、股間は爆発しそうな程に膨れ上がっている。
 生身の裸の女を組み敷いている。しかも少し気になっている女を・・・。
 ドラマでのシーンなら、キスしながら服を脱がせる所でとっくに終わっている。
「春菜。もっと・・・いい?」
 けれども、聞かずにはいられなかった。
 春菜が無言で頷くのを確認すると、翼は春菜の下半身に手を伸ばした。
 人に見られることには慣れているはずだが、極度の緊張の余り下着を脱がす手が震えてしまう。
 下着が少し湿っていたので、もしかして?と思ったが、初めて触るそこは想像以上に濡れていた。
 中心に指を差し入れると春菜が「あっ」と声を漏らした。
 周辺を探りながらどうにか入り口を見つけ、洞窟の奥に指を進めた。
 テクニックなどは分からない故、夢中で指を動かした。
「ちょ、ちょっと待って。もっと優しく・・・」
「・・・分かった」
 翼は少しゆっくり指を出し入れしたり、指の腹で肉壁を押し付けるように探った。
 春菜は切なそうな声を上げてよがっている。
(面白い・・・愛液がどんどん出てくる・・・)
 春菜の性器から発せられた‘くちゅっ’という卑猥な音を聞くと、翼はトランクスの上部に先走りを滲ませた。
 ペニスは痛い位に硬くなり、準備万端どころか限界を通り越していた。
 自宅でビデオを見てオナニーするならとっくに射精を迎えているはずである。
 しかし、今は春菜が相手。男のプライドをかけて我慢しなければいけない。
「春菜って感じやすいの?」
「っ・・・バカ!!」
 春菜は頬を染めて軽くにらんだ。

 春菜のリードによって二人は交わった。
 繋がった瞬間、二人とも歓喜の声を漏らした。
「・・・ふぅっ・・・」
「うっ・・・・・・・」
(めちゃくちゃ気持ちいい・・・・・・)
 翼は春菜の熱い泉に包み込まれ、それだけで達してしまいそうになった。
「大丈夫・・・?」
「な・・んとか・・・」
 込み上げてくるものと必死で戦った。
 落ち着いた頃、翼はゆっくりと抽送を始めた。
 誰に教えられた訳でもないが体は本能のままに春菜を貫いている。
 恥骨同士がリズミカルにぶつかり合う。
 春菜は翼の表情を伺うと、眉をしかめて苦しそうな表情をしていた。
 初めてのセックスだということで春菜は忠告しておいた。
「ねえ、早めに抜いてね」
「うん・・・」
 一応大丈夫な日だと思うが、中に出されて余計な心配をしたくない。
 翼はより一層速度を速め、パンパンと音を立てている。
(限界まで春菜の中にいたい・・・)
 鈴口がヒクヒク動き、先走りを出してしまっているかもしれない。
「はぁ・・・・あ・・・・・・」
 翼は低い声を出した。
「やばい・・・」
「え!?」
 春菜は焦った。
「は、早く!」
 春菜が叫ぶと、翼は外に素早く出た。
「い、、イクっ・・・!」
 その直後、猛々しく直立したペニスの先から精液が飛び散った。
 春菜のお腹に点々と白い液体がついた。
「間一髪・・・」
 荒い息を整えながら翼が言った。
「もうっ!間に合わないかと思ったじゃん!」
「ごめん。マジやばかったわ。ちょっと遅かったら中で出してたな・・・」
 翼は春菜のお腹をティッシュで拭いてあげると、春菜の横に寝転がった。
「春菜、ありがと」
「ん・・・」
 春菜は幼馴染相手に少しやり過ぎたな・・と苦笑いした。
 翼は起き上がり、春菜の目を見つめた。
「何?」
「好きだよ」
 翼はきょとんとしている春菜に軽く唇を重ねた。
「はい・・・?」
「春菜。俺と付き合ってくれない?」
「は・・?本気?」
「うん。何か順序が逆になっちゃったけど」
 突然の告白に春菜は驚いた。
 テレビで見る翼とは違い、物凄く照れて緊張しているようだ。
「いいけど?エッチ目的なんじゃないの?」
「そ、そんなことないよ!」
 困っている翼を春菜は少し苛めてやろうと思った。
「じゃあエッチはしばらくなしね」
「えぇーー?・・・まあ、別に春菜がいればそれでいいけどね」

 今日は、ドラマの最終回が放送される日。
 友達のカラオケの誘いを断って、春菜は早めに帰宅した。
 翼の演じるベッドシーンを見て、ドキドキしながらあの夜を思い出していた。
 幸せそうに添い寝をする相手役の女優に少し嫉妬しながら・・・。

---------終わり---------

【あとがき】1年位前から、年下の男の子にキスの指導をするお話を書いてみたいなと思っていました。 年上好きの作者ですが、たまには年下の子もいいかも・・・(^^*)
愛しの彼といつもより♡なHを

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