fiancee 2  (関連作品:Please teach me!!
 20分程高速を走った後、一般道に降りさらに数分走っただろうか。車が停まったのはどこかの駐車場だった。
「着いたぞ。降りろ」
 車から降りたは助手席のドアを開け、私の手を引いた。
「どこ行くの?」
「見りゃ分かるだろ。ホテルだよ」
 看板には有名なホテルの名称が書かれてある。ビジネスホテルじゃなくって、結構高そうな所 だと思う。
「何で!?」
「明日休みだから泊まる」
 は強引に私の手を引っ張って入り口へと向かう。
「ちょっと待って!あたしはホテルなんて行く気ない…」
 私の話など全く聞こうとしないはフロントへと歩を進めた。
「予約してないけど、あいてます?海の見える部屋で」
「…少しお待ちください」
 予約もなしにこんなホテルに入るなんて、係員は少し不審そうな目つきで私達をちらっと見た。 クラシックの音楽が流れ、館内に高級感を漂わせている。
「ねえ、何で急に…」
「いいから、黙ってろ。後で分かるから」
 が突拍子もないことをするのは今に始まったことではない。私は諦めて嘆息した。
「お待たせしました。デラックスダブルのお部屋なら1部屋開いてますが、どうされますか」
 パソコンを操作していた係員が尋ねる。
「じゃあ、そこで」
「1泊5万円になりますが宜しいでしょうか?」
「構いませんよ」
 私はその高額な料金に口をパクパクしそうになりながら、が住所と名前を記帳するのを待っていた。
 が書いたものを見ると、スタッフの表情が途端に変わった。
「これはこれは様。いつも御ひいきにして頂き、ありがとうございます」
「ども…」
 ここはの行きつけのホテル?
 私は軽い眩暈を覚えた。
「お父様によろしくお伝え下さい」
 彼はに軽く頭を下げると、傍にいた男性に部屋を案内するように指示した。

 部屋まで案内された私はおどおどしながら足を踏み入れた。
 そこは、私が家族旅行で泊まったことのある部屋とは比べ物にならない程、広くて綺麗だ。
 大きな窓からは海が見えるらしい。でも私は夜景なんか見る気になれなかった。入り口付近にたちすくむ。
「シャワー浴びて来な…」
 がある扉を指差して言った。
 部屋に入って第一声がシャワー浴びろって…。
 疑問を持ちながらも、言われるがままに私はバスルームに入った。
 が私を連れて来た意味が分かった気がする。
 最後に1回だけやりたい。そういうことだったんだ。
 これじゃ、ゆっくり話がしたいと言って女性をラブホテルに連れ込む軽い男と何ら変わりない。
 しかも高いホテルをラブホテル代わりに使うという、お金持ちじゃなきゃ出来ない行為。
 悔しさに涙が込み上げて来た。
 こんな扱いをされたら、怒って帰っても良いと思う。
 でも私は素直にバスローブを手にとった。新しい下着なんて当然持ってきていない。素肌の上に直接ローブを羽織り紐できゅっと結ぶ。

 最後にに思い切り抱かれたかった。
 さよならする前に、最後に甘い思い出を作っておきたい。
 こんな私は、やり逃げする男と変わらない卑しい女。

 私がベッドの前に足を運ぶと、はすぐさまバスルームへ駆け込んだ。
 あともう少しで私はこの広いベッドの上でに抱かれて溶かされる。
 それが終わったら一人の味気ない日々が待っている。半年前まではそうだったんだ。何てことない…。
 はバスルームから出てくると、私の横に近寄ってきてベッドの上に腰掛けた。
 そっと肩を抱き寄せた。
「やっと落ち着いて話が出来る。食事あれで足りたか?ルームサービス頼むか?」
 私は黙って首を横に降った。
 これから別れ話をする時に食べられる程、私は図太い女じゃない。
 と笑って過ごせたからどんな食べ物も美味しく感じたんだよ。
「それで何だったかな。ああ、そうだ…」
「いいから、抱いて」
 私はが話そうとするのを遮って告げた。
「は?」
「何も言わなくていいから。終わったら大人しく家に帰ってもう会わないから。このまま抱いて…」
 強く決意したつもりでも、語尾の方は蚊の泣くような小さい声になってしまう。
「何言ってんだ…?」
 が私の顔を覗き込もうとするから、私は急いで背けた。
「だって、には婚約者がいるんでしょ。いずれその人と結婚するんでしょ?私とは今だけの付き合いなんでしょう…」
 思い切って早口で告げた後、嫌な沈黙が流れる。
 次の一言を聞かされたらもう終わりだ。

「落ち着け。何早とちりしてるんだよ」
 は私の頭をコツンと軽く叩いた。
「いた…」
「許嫁がいるとは言ったけど、そいつと結婚するとは一言も言ってないぞ?正式に婚約してるわけじゃないしな」
「でも……」
 確かにその通りなんだけれど。普通は許嫁がいると言ったら、ね?
「どんなマイナス思考に陥ってるか知らないけど、と別れようなんて考えてないから」
「ほ、ほんとに?」
「ああ、これから先も俺たちはずっと一緒だ。長く付き合えばおまえと結婚することになるだろうし、親の反対を押し切ってでもどこまでも突き進む」
 私と結婚?
 反対を押し切るってそんなこと出来るの?と問おうとする前に、私はに抱き締められていた。
 ローブの隙間の裸の胸が鼻に当たる。二人とも同じボディソープの香り。
「急に変なこと言い出すからびっくりしたじゃねえか…しょうもない噂をすぐに信じるなよ。ただでさえは世間知らずで騙されやすそうなんだから。そんなんじゃ患者にすぐなめられるぞ?」
「そうなのかな…」
 のお説教でさえ今は心地良く響く。
「そんなだからこそ、ほっとけないんだけどな」
 優しい瞳が近づいてきて、私達は唇を合わせた。
 悲しいキスじゃなくて、私達の未来を祝福するキス。
 何度も唇を重ねては離し、ついばむように互いの唇の感触を確かめる。
 微笑みながら何度繰り返したか分からない。軽く唇を開くと、隙間からの舌が侵入してきて 口腔内をかき混ぜる。
「はぁ……んんっ…」
 上顎を撫でられるとくすぐったくて気持ちよくてくぐもった声が漏れてしまう。熱い吐息と唾液が 混ざり合い、口の中で切なく蕩けていく。
 さっきまで絶望の淵に立たされていたとは思えない。身体の奥が熱く火照り、ある事を待ちわびている。
 それはと気持ち良くなること。
 既にキスだけで充分気持ち良いけれど、もっと深い所まで感じたいと願っている。
 どこまでも乱れたい、の腕の中で淫靡に踊りたい。
 のキスは言葉も出なくなる程、素晴らしい。
 準備万端と言われてもおかしくない位、下半身が蕩けているのを感じた。

 広いベッドに倒されると、の唇が首筋をどんどん下がって胸元へと下りて行く。幾重にも触れられる唇の感覚にただ酔いしれている。柔らかな感触は胸を強く震わせ、喘ぎを導き出した。
 ローブの上から優しく胸を撫でられ、敏感になっている蕾と擦れて変な声が漏れそうになる。
「ちょっと痩せたんじゃないか?ちゃんと食べてるか…?」
 私がうんと頷くのを確認すると、惜しむようにそっと揉んでいた。
 何かに気付いたように、急にぴたりと手の動きが止まった。
「もしかして…」
 はローブの胸の部分を引っ張りはだけさせると、私が何も着けていないことを知ったようだった。目を丸くして驚いた。
 私は紅潮する顔を抑えられずにそっぽを向く。
「おまえ、ブラ…」
「だって、同じの着けるの嫌だったんだもん…」
 私は精一杯言い訳をする。
「じゃあ、下も?」
 私がこくんと頷くと、はへぇーと嬉しそうな声を出した。
「前はあんなに恥ずかしがってたのにな。やっと積極的になってくれたか」
「ちがっ…」
 へぇー、そうかそうか、とは満足そうに繰り返し言う。
 あの時はもうどうにでもなれって思ってたから…。
 自分のしたことに恥ずかしくなりながら心の中で言い訳を唱える。

 バスローブの上から立ち上がっている頂を口に含まれる。そのままふぅっと息を吐くと周辺がじんわり熱くなる。女性が男性のものを口で愛するように、唇を使って布ごと擦りあげた。
 もどかしい刺激によって得られる鈍い快感が私を焦らせようとする。
 もっと確かな刺激を求めて、まだかまだかと待ち焦がれた。
 の髪の毛に手を差し入れ、手串でとかす。
 はたから見ると、ふわふわと穏やかな波間を漂っているように思えるだろうが、海面下では荒れ狂っている私。切なさで胸が掻き毟られる。
 紐を外し、バスローブをそっとめくられると、何も身につけてない体が晒された。火照った体が 直接空気に触れてひんやりする。
 の熱っぽい瞳でじっと見つめられ、鼓動が一気に高まる。
 初めて抱かれてからまだ数回しか体を重ねていない。それでも回数を重ねる毎に着実に私の心身はに乱され、次を求める気持ちが強くなる。
 愛する人と肌を合わすことは身も心も満たされ、素晴らしいことだと感じる。
 教科書で人体のお勉強をするだけでは決して知ることは出来なかった。

「相変わらず綺麗な体してる」
 静かな部屋にの声が響き、真剣な眼差しを向けられると激しい恋心が沸きあがって来る。 そんなことないよ、というのが精一杯だ。
 この人はどこまで私を変えていくのだろう。今の私は官能を求める女の顔になっている。
 そんな目で見ないで。
 胸が締め付けられて叫んでしまいそうになる。
「そんな艶っぽい目で見られたらたまんねえ…おまえ、腕をあげてきたな」
「腕って・・・別に意識してるわけじゃないよ…」
 あなたに触れられると、自然と切なくなってしまうんだもの。
「意識してないからこそ強烈なんだよ。もうおまえ以外の女は抱けない…」
「許嫁とも……?」
「当たり前だ、もうそのことは忘れろよ」
 私ってばまだこだわってるなんて、嫉妬深いやつだ。
 これからは信じていいんだよね?
、愛してる…」
 その言葉は私の胸の奥深くに刻み込まれた。
「うれしい……」
 込み上げてくる涙を必死で堪えようとするが、の顔が次第にぼやけて来る。
「泣くのはまだ早いぞ」
 そう告げると、は私の胸に顔を埋めた。唇できつく吸われ、歯で軽く噛まれて胸元に赤い 花が散らされる。
 しばらく会えなくなる私に愛し合った証を刻み付ける。軽い痛みさえも下腹部にきゅんと甘い刺激となって届いた。
 胸の蕾の周りをちろちろと舌が這い回り、もっと確かな場所に触れてもらえる期待を大きくさせる。両手で優しく膨らみを撫でられ、目を閉じていると強い衝撃が私を襲った。敏感な頂が熱い舌で転がされている。私はあまりの快感で顎の裏が見える程、体を弓なりに反らせてしまう。
「こんなに乳首を固くして、はいやらしいな。もっと舐めて欲しいか?」
 痛い位に尖った突起を小刻みに指でこねくり回しながら、が意地悪く尋ねる。

 私は黙って頷き、目で訴える。
 分かってるくせに、辱めないで。
 もっと舐めて、限界まで気持ち良くして欲しい。いや、限界を超えたって構わない。
 恥ずかしい所を手と口でいっぱい弄って欲しい。

 ざらざらした舌でねっとりと撫でられたり、舌先でちょんちょん突っついたり、変化を付けては弄ぶ。
「いやぁ…あぁ……あぁんっ」
 刺激によって体をくねらせ、太股を擦り合わせ、口からは嬌声が飛び出す。
 喧嘩した後のエッチは燃えるって聞いたことがあるけど、今の状況はそれに近いのかな?
 今日の感じ方は半端じゃない。脚の間が湿った感触がして、どれだけ溢れてるのか想像できる。

 のせいだよ…。
 あんなに心配させておいて、その後甘い言葉で私を酔わす。
 もう絶対に離れたくないって思わさせる。
 ダメならもう一度だけ体を重ねたい思わさせる。

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