決戦の日 1 名前変換 
 お兄ちゃん(実の兄ではなくて従兄弟)が大学生になって、うちの近くのアパートに住むことになったのを知った時、あたしは飛び上がって喜んだ。
 それからというもの、夏休みや冬休みになると、あたしはお兄ちゃんのアパートを度々訪ねた。
 お兄ちゃんはうちの母方の兄弟の息子で、あたしより2歳年上の大学1年生だ。大学の国際何とか科っていう所で勉強している。
 うちの両親は兄弟が少なく、親戚には年が近い人が少なかった。
 お正月等や法事で親戚が集まった時に、唯一話が合ったのが従兄弟のお兄ちゃん だった。
 男兄弟がいないあたしは、お兄ちゃんと会えるのが楽しみだった。
 かっこ良くて優しくて、頼りになるお兄ちゃん。
 あたしにもこんなお兄ちゃんがいればいいのにと、妹しか産んでくれなかった母に文句を言って困らせたこともあった。
 「従兄弟同士は結婚できる」という事実を知ってから、いつの間にか真剣にお兄ちゃんに恋していたのかもしれない。

 冬休みになると、あたしは宿題を教えてもらうことを口実に、お兄ちゃんの家にお邪魔した。そうでもしないと、サークルやバイトであまり時間が無い彼に、嫌がられてしまうかもしれないと恐れているから。
 遊びに行った時は、最初は面倒臭そうにされるけれど、何だかんだ言って優しくしてくれるから甘えてしまうんだよね。
「今日は英語のプリント教えて?」
「…はー?またかよ」
 さっきまで寝ていたらしく、いつになく不機嫌そうだった。
「だって分かんないんだもん。クッキー持ってきたからお願い…」
「俺を菓子で釣る気か……まあ、いい。上がれよ」
 その言葉を待っていたあたしは、申し訳無さそうな顔を作って玄関で靴を脱ぐ。
 しかし、その2分後には笑顔になってしまう。
 宿題もはかどるしお兄ちゃんとも話せるし、一石二鳥だね。
 区切りの良い所まで終わらせると、あたしはクッキーを取り出して、お兄ちゃんに渡した。
「サンキュ…って、こんなに食えないから、おまえも食べろ」
「やった!」
「これ、の手作り?」
「え、まあ…暇だったから…」
 お兄ちゃんはあたしの顔を見ると、溜め息をついて言った。
「こんなの作る暇があったら、彼氏に作ってやれよ。結構美味いんだからさー」
 お兄ちゃんにべったりで、17年間彼氏がいないあたしを心配しているのか…。
「あたしだって、彼に作る時ぐらいありますよー」
 負け惜しみで言ってやった。
「マジで?、彼氏できたのか!?」
 そっちから言ってきた癖に、お兄ちゃんの反応の良さに驚いてしまった。
「彼氏って言うか、まだ付き合ってないけど、告白された人ならいる…」
 本当は彼とは付き合う気はあまりないのだけど。
「そっかーおまえにもとうとう彼氏が出来るのか。ブラコンを卒業してくれたら俺は嬉しいよ」
 お兄ちゃんは、わざとらしくブラコンを強調して言った。
 別にあたしだって、従兄弟のお兄ちゃんだから好きになった訳じゃないんだけどな。
 世間から見れば、ブラコンだと思われるんだろうか。
 それでも構わない。お兄ちゃんを好きだという気持ちは、全く血が繋がっていない男子を好きになるのと変わりないもの。
「これで心置きなく日本を離れられるな」
 お兄ちゃんは、満足そうにこっちを見て笑った。
「日本を離れる?誰が?」
「誰って俺が。カナダに留学するんだよ。言わなかったっけ?ほら」
 お兄ちゃんが指差した方を見ると、大きなスーツケースが置いてあった。海外に行く人が持っていくようなとてつもなく大きなもの…。
「聞いてない!いつから?」
「来週の月曜からだけど…」
「いつ帰ってくるの?」
「来年の12月」
「嘘…」
 それまで美味しかったクッキーの味がしなくなった。
「おーい、大丈夫か?まあ、1年なんてあっという間だろ…」
 お兄ちゃんはあたしの様子を見て、よしよしと慰めている。
 そりゃ、今までだって1年位会えない時もあったけれども、折角近くに住むようになって頻繁に会えると思っていたのに。
 カナダで一年も暮らしてたら、向こうで彼女見つけちゃうかもしれない。
 今日は金曜日だからあと3日後には、いなくなっちゃうんだ…。

 夕方、あたしはとぼとぼ歩いて自宅に戻った。鏡を見ると酷い顔をしていた。
 どうしたらいい?
 今の自分に何が出来る?
 普通は何か餞別でも渡して、笑顔で見送ってあげるのが一番だよね。
 でも、それだけを素直に実行出来そうにない自分がいる。
 あたしはいつになく長時間お風呂に浸かりながら、ある決心をした。
 決戦は日曜日になるだろう。

 日曜日の午後9時、夕ご飯を食べてお風呂に入ったあたしは、お兄ちゃんのアパートを訪ねた。
 彼の部屋の前で深呼吸して、気を引き締めた。
 ドアを開けて、そこにいるのがあたしだと知ったお兄ちゃんは、驚いたような嬉しそうな複雑な表情をしていた。
「おまえ、こんな時間にどうしたんだよ」
「明日朝早いだろうから、今日のうちに見送りに来たの」
 自然に言えるように頑張った。
「見送りって…親は心配しないのかよ?」
くんの所に見送りに行って来るっていったら、別に何も言われなかったよ」
「俺、よっぽど信用されてんだな…」
 お兄ちゃんは、頭を掻きながら小首を傾けた。
「まあいいや…テレビでも見て行くか?」
「うん!」
 あたしはこの後、どうやってあの話を切り出そうかと一人で緊張しながら、お兄ちゃんの横に座った。
 寝る準備をしていたのか、既に布団が敷かれていて、いつもなら気にすることのない光景があたしをドキドキさせる。あたしの頭の中がえっちなことでいっぱいになっているからだろう。
 この前に来た時よりも部屋は片付いており、お兄ちゃんが長期間この部屋からいなくなる事を物語っていた。
「で、今日も何かくれんの?クッキーとか」
 気のせいか、お兄ちゃんも落ち着きがなく、そわそわしている感じがする。
 早く出て行って欲しいんだろうか。
 えーい、もうどうにでもなれ!
「今日はないの…」
「ふーん、別にいいけど」
「あ、あたしからのお願いになっちゃうけど…」
 お兄ちゃんがこっちを向く前に告げてしまおう。
「お兄ちゃんに抱いて欲しいの!」
 思い切って口に出したあたしは、タコのように真っ赤になっているであろう。
「は?」
 もう、この鈍感男は!もう一度言わせる気?
 って、いきなりそんな事言われたら無理もないか。
 あたしは、恐る恐るお兄ちゃんを見ようと、顔を上げた。
 その時、あたしはお兄ちゃんに抱きしめられた!
 熱い抱擁?鼓動が急激に高まる…と思ったら、背中をポンと叩かれて体が離れた。
「ハグぐらい別にいいぞ。俺も向こうに行ったら経験するだろうしな。練習しておくか」
 呆気にとられていると、お兄ちゃんはふふんと鼻で笑って言った。
 心なしか、顔が赤くなってる気がする。
 お兄ちゃんに触れられてラッキー!って、違う。
 あたしは求めているのはもっと大人の意味での「抱く」。
「どうした?嫌だったか?」
 黙っているあたしを見て、お兄ちゃんは心配そうな口調に変わった。
「ううん…嬉しい。でも、もっと…」
「もっと?」
「お兄ちゃん……あのね、一度でいいから…あたしを女にして!」
 お兄ちゃんの表情が凍り付いたのを見た途端、涙が溢れてしまい、机に突っ伏した。

 気付くと、あたしの頭やら背中を優しく撫でてくれる手が。
 ごめんね、いつもワガママ言って困らせてばっかりの駄目な従兄弟で…。
 お兄ちゃんはあたしの顔を上げさせようと、頭を持ち上げた。
 嫌・・・見られたくないのに。力が入らない。
 涙でぐちゃぐちゃになった顔をティッシュで拭いてくれた。
「もう、最悪…勝手に押しかけて、勝手に泣いて…」
 今更ながら、自分のしたことを後悔した。
 しゃくり上げながら言うあたしを見て、お兄ちゃんは笑った。
「そう言えばおまえ、昔も泣きまくったことあったよな。じいちゃんの葬式の時に、俺らが帰ろうとしたら、まだ帰るなって」
「…そんなことあったっけ」
「うん、あった。あの頃はガキだったのに、もいつの間にか大人になったんだなー」
 優しい声でお兄ちゃんは告げた。
「そりゃもう、セブンティーンですから。身も心も大人だよ」
「まあ、あれだ…もうあんな事、嘘でも言うんじゃないぞ。他の男だったら今頃とっくに襲われてるからな」
 あたしの頭を拳で軽くコンと小突いた。
「嘘じゃないもん。本気で言ったんだから!あたしはお兄ちゃんのことが本気で…」
「言うなよ!」
 お兄ちゃんの苦悩に満ちた声が聞こえたと思ったら、あたしは彼の腕の中にいた。
「お兄ちゃん…?」
 あたしをぎゅっと抱きしめる腕がかすかに震えている。
「おまえを…置いていくのが辛くなるだろう」
「今だけでいい。お兄ちゃんのものにして…?」
「…いいんだな?後悔するなよ」
 お兄ちゃんは真剣な目付きで問い質す。
 あたしは涙目で頷いた。
 ゆっくりと布団の上に倒されていった。お兄ちゃんへの想いと淫らな欲望が体を支配して、中心を溶かしていった。
 お兄ちゃんの唇があたしのものにぶつかる。
 あたしは目を閉じて、初めての感覚を味わった。
 心臓は絶え間なくドキドキして、頭の中はふわふわして、夢の世界にいるみたい。
 お兄ちゃんは何度も唇に吸い付いてくるから、あたしも遠慮がちに求め始めた。
 顎を組み替えては、ちゅちゅっという恥ずかしい音が響く。
 そのうち唇に違和感を感じた。
「んっ…?」
 濡れてる。ぬるっとしたものが入ってきた。お兄ちゃんがあたしの口の中に舌を入れてきたんだ。
 それはクネクネ、ぬちゃぬちゃ、あたしの口腔内をえっちっぽく動き回る。
 これが大人のキスなんだ…。すごい、唾が沢山出てきちゃうよ。
 お兄ちゃんに色んな所を舐められて、頭がボーっとして来た。
 お酒でも飲んだ時みたいに体から力が抜けて、一点がじんわり熱くなっている。
 唇が離れて、お兄ちゃんがあたしを見つめる。
 その視線があまりにも熱くて、胸の奥の方にきゅんと痛みが走った。
 もう迷わない。あたしはこれから、お兄ちゃんに全てを捧げる。
、大人の顔になってる…」
「大人の顔って?」
「エッチな表情してるってことだよ」
「うそ…?」
 知らないうちに、お兄ちゃんのことをえっちな目で見てたんだ。
 抱いて欲しくて堪らない気持ちが伝わってしまったのかな?恥ずかしい…。
「それが普通だから気にすんな」
 そう言うと、お兄ちゃんはあたしの耳をぺろっと舐めた。
「きゃっ!く、くすぐったいよ…」
 いきなりそんな所、舐められたらびっくりするじゃない。
「そーか、は耳が弱いのか」
 低音の声で囁かれて、耳朶にキスをされる。
 その瞬間、さっきとは違うゾクッとした感覚が体に走って、思わず体を縮こまらせた。
 お兄ちゃんは犬なんじゃないかって思う位、ペロペロ舐めてくる。
 でも全然嫌じゃなくて、ぞくぞくしながら勝手に口から「あっ…」って 声が出てくる。
 どうしちゃったんだろう、あたし…。恥ずかしくてぎゅっと目を瞑った。
 お兄ちゃんの唇が首筋を下の方に向かって移動してくる。そして上着のボタンを一つずつ外していくのが分かる。
 一枚、また一枚と脱がされ、キャミソールと下着だけが残された。
 冷たい空気が素肌に触れるけれど、あたしの体の中心はホッカイロでも当てているみたいに温かい。
「寒いよな?布団被るか」
 お兄ちゃんの布団の中に始めて入る。冷え切っているお布団の中で縮こまって待つ。
「ひえ…寒い…」
「待ってろ。この後、裸で暖め合おうな」
 お兄ちゃんはニヤッと笑って言った。
 覆い被さってくる大きな体。トランクス以外は何もつけていなかった。
 上半身裸の男の人を見るのなんて初めてじゃないけれど、胸が高鳴ってまともに顔が見れない。
 男の人の裸でドキドキしてるなんて、あたし、スケベだな…。
 
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