コートの上で触れて 2 名前変換
 (ああ、さんが私のことを……?夢みたい)
 うすうす気付いてはいたものの、きちんと言葉にしてもらわないと確信が持てなかった。
 “ 好きだ ”の一言が飛び上がる程嬉しい。
「私も…前から好きだった」
さん…」
 二人とも仰向けで寝ていたが、寝返りを打ち、互いが向き合った。
 しっとりした空気が包み込む。
 早くもは自らの体に起こる変化を感じていた。
 に触れたいという想いが、物凄い力で押し寄せてくる秘所の疼きへと変わる。
さんに会える日が楽しみで、前日からテニスの素振りの練習なんてしちゃってさ」
 いつになく照れているの声がの心に染み渡っていく。
「それで、この気持ちが恋だと気付いてからは…楽しくて、苦しくて、でもどうすることも出来なくて」
 の体は、金縛りにあったように動くことが出来なかった。しかし体の芯は熱くなり、への想いがあふれ出す。
「ありがとう…私、さんに出会って本当に幸せ。何の取り得もなくて、家族が全てだった私に最高の楽しみと希望を与えてくれたの…」
 こんな言葉、旦那にも告げたことがない。は産まれて初めて異性に激しい愛の告白をした。
「いや、さんは魅力的な女性だ。でも…俺と関わることで家庭を守れなくなってしまうのは心苦しい」
 の言葉がの胸を突き刺す。
 二人が結ばれたらは家族を裏切ることになる。
 愛なんてものはとうになくなっているが、生活のために働いてくれている旦那。生意気な口をきかれるが、将来が楽しみな我が娘。もしばれたら、彼らを深く傷つけ、憎しみの感情を持たれることだろう。
 も、手を伸ばせばすぐそこにある目の眩みそうな程の愛欲と守らなければならない家族のことを考え、葛藤に苦しんでいた。
 愛しているが決して傷つけたくない。不幸になんてさせたい訳じゃない。
 本当の幸せとは何?
 考えても答えは出なかった。

 しばらくの間、眠れない時間が続き、やがてが口を開いた。
さん…」
「はい?」
「今晩だけ…今夜だけ、抱き合って眠らないか?」
 苦悩に満ちたの声がはっきりとに届いた。
「素敵…でも…」
「情けない俺は、もう抑えきれそうも無い。だから…明日が終わればもう二人きりで会うのは止めよう」
 の迷いを汲み取るように、は告げた。
「そうね、それがいいと思うわ…」
 が賢い男で良かったと思った。
 快楽を求めるだけの男と仲良くなっていれば、きっとは本能のままに体を重ね、どこまでも堕ちていたに違いない。そのような男は、最終的には女性を傷つけて捨てることもあり得るだろう。
 頭では不倫はいけないと分かっていても、のようないい男と恋愛していると考えるだけで舞い上がってしまう。不倫する機会がないだけで、自分がいざそうなれば辞められない人間は大勢いることだろう。もそのうちの一人だった。

「そっちへ行っていいかな?」
「どうぞ…」
 は窓側の方へ寄り、が寝るスペースを空けた。
 は自分の枕をのベッドに置くと、薄い掛け布団をめくって入ってきた。距離が近づくにつれて、互いの胸の鼓動が高まる。
 少し開いた窓からは秋の虫の美しい合唱が聴こえてくる。
「この間までさんとカキ氷食べてたと思ったら、もうすぐ秋なのね…」
「そうだね。さんと過ごす時間は楽しくて、あっという間に終わってしまう。このまま時間が止まってしまえばいいのに…」
 もそう思った。
 不倫中の二人が交わったまま天国に行くという某小説を思い出し、心の中で苦笑した。
 しかし限られている時間であるからこそ、愛する人と過ごす時間が貴重で素晴らしいものと感じることが出来る。
 結婚すればずっと一緒に過ごすことは出来るが、それに慣れてしまうと人間の脳は皮肉なもので、幸せだと認識できなくなる。
 今日が終われば、が二人で過ごす夜は二度とやって 来ない。愛の言葉を交わしながら触れることも出来ない。
 今日が終われば、二人の記憶の中でしか愛は再現できない。
 故に、隣にいる人物が愛しくて堪らなくなる。
さん…」
さん」
 ほぼ同時に互いの名前を呼んだ。二人は照れ隠しに笑った。
 心が通じ合っているのかと都合の良いように思いたくなる。
「あ、お先にどうぞ」
「いいんですか…じゃあ、今日だけはって呼んで下さい。今だけは恋人同士でいたいの」
 先ほどから決心していたことを口に出す。
「…了解」
 の手をぎゅっと握った。の大きくて温かい手を確かめるように、は指を添えた。
、抱きしめていい?」
 ぎゅっと握ったままの手からの秘めた想いが伝わってくる。
「ええ、強く抱きしめて…」
 は寝返りを打ちに近寄る。も彼の方を向いた。
 二人は目を閉じたまま無言で抱き合った。
 愛する人に抱きしめられることがこれ程嬉しかったのは初めてかもしれない。
 最初で最後の抱擁は力強く、もの悲しく、官能的であった。
 二人の胸の鼓動がシンクロし、黙ったまま体で愛を語っていた。
 服を着たままでも、互いの内に秘めた熱が伝わってくるようだ。
 の筋肉質な体に包まれて、早くも体の芯が蕩けていた。
 のベッドに入ってから、とうに勃起していた。
 このままを組み敷いてしまいたい衝動を必死で抑えていると、背中に回した手がマッサージするように動いてしまう。それだけでの感情は昂ぶっていった。
 だが、どちらもそれ以上は行動することは出来ない。動かしたくなる手をぐっと堪えたまま、時間だけが過ぎた。

 しばらく時間が経つと、を抱くの腕の力が弱まった。
 どうやらそのまま眠ってしまったらしい。スースーと寝息が聞こえて きた。
 と一晩過ごすために起きていようと頑張っていたのだが、疲れと緊張のために夢の世界へ足を踏み入れようと していた。
 (さんと抱き合うのは気持ちいいな…寝たら駄目だ、でも…)
 現実の意識が殆どなくなると、の目に淫靡な光景が飛び込んで来た。
 自分の体の下には全裸になったがいた。
 麗しい肉体に、誘ってくる妖淫な瞳。
 は夢中になっての唇を奪った。彼女も激しくの唇を貪欲に求めてくる。
 粘っこい水音をBGMに互いの唾液を交換し合い、欲情を最大限まで引き出した。
 のペニスは妻との行為では考えられない程、固くそそり立っていた。充血しきった海綿体は甘く痺れて、に呑み込まれることを望んでいた。
 (…ああ、早く君と一つになりたいよ)
 次の瞬間、急に目の前が暗くなった。
 (夢だったのか、欲望丸出しだな…)
 痛い位に張り詰めた股間を探ると、再び興奮が呼び戻った。
 隣に愛する女性がいるというのにあんな夢を見てしまい、今度こそ堪らなくなった。
 (このままじゃ無事にさんを家に帰せないかもしれない。 仕方ない、トイレで…)
 そう思った時だった。
「んっ…」
 に背中を向けて寝ているから微かに声が聞こえてきた。
「あっ…はぁ……」
 痛みに耐えて声を漏らしているようにも聞こえる。
 に声をかけようとして踏み止まった。
 の肩が規則正しく揺れているのが感じられた。ごそごそと何かを擦るような音も聞き取れる。途切れ途切れに聞こえる声… が眠ったのを確認したは、火照った体を鎮めるためにこっそり自慰をしていたのであった。
 気心知れた旦那の隣でもしたことがなかった。
 しかし、に抱かれて催した欲望は、理性で押し止められるような軽いものではなかった。
 じっとしているだけで愛液が次々と溢れ出し、ツンと立った乳首を触りたくてたまらない。
 静かにすれば大丈夫と自分に言い聞かせ、性欲に負けてしまった
 ブラジャーを外して胸をまさぐり、膨らみを揉みながら指先で尖った実を弄ぶ。
 いつも一人でするのとは比べ物にならない快感だ。先端に触れる度に体をビクっと震わせ、小さく喘ぐ。白いむっちりした太股の奥は洪水状態だった。
 (ああ、最後にさんに抱かれたかった…隅々まで触られて彼のを触ってめちゃくちゃになりたかったのに…)
 心では関係を持たないことを納得したはずなのに、体は大反対しているようだった。
 そんなの裏の姿を見て、も抑えるのが辛い程興奮しきっていた。張り詰めたズボンの中のものが今にも暴れだしそうだ。
 (さんがオナニーしているなんて…ごめん…我慢できそう もないな)
 そっと妻への謝罪の言葉を心の中で発した。
「うーん…」
 は声を出して寝返りを打った。は驚き、夢中になっていた行為を止めて息を潜める。
さん…寝ちゃったか」
 先ほどまで寝ていたかのような演技をして、の行為には決して気付いていないフリをする。
 に近づくと、後ろから抱きしめた。
 の心臓は一気に加速し始める。
…」
 の髪の毛や首筋にキスをし始める。
 彼に触れられた部分は熱い印を刻み、をゾクゾクさせた。
 再び官能のスイッチが入り、体が淫らに変化していく。
「はぁぁ……」
 (どうしたのかしら?寝惚けてセックスしたくなっちゃったの?)
 きっかけはどうでも良いが、このままが続けてくれればいいのにと願う。
「あっ…(もっと)」
 次第にの手が忙しなく動き始める。服の上からの胸の辺りを探ると、ブラジャーが外れていたために乳首に触れてしまった。
「んんっ!」
 敏感な場所を触られての体に電流が走る。
 (さん、感じてくれているんだね)
 漏れ出す声を聞いて、の感情も昂ぶる。
 いつ本格的な行為に発展するか、暗闇の中で二人とも荒くなる息を抑えながら焦らし、焦らされていた。
 自分の決意なんて脆いものだと思う。彼女が家族との幸せを壊して欲しくないと思ったのが、ほんの30分前なのに。快楽を目の前にすると太刀打ちできなかった。
 彼女を抱きたい抱きたい抱きたい…
 鳥肌が立ち、全身がそう訴えていた。
 は膝立ちになりを仰向けに寝かせると、覆い被さった。
 無言のままで素早く唇を奪う。飢えた野獣のように激しく唇を貪った。
 何度も口づけを交わしている恋人同士のように、ぴったりと型にはまった。
 の口腔内をの舌がいやらしく這い回る。眩暈を覚えながら、彼の舌を美味しそうには啜った。
 話題のスイーツなど足元にも及ばない。食べても太らない。しかし、中毒になる危険性はある。甘く官能的で、人それぞれ違う香りがする大人のキス。は最高のデザートを夢中で味わっていた。

 唾液を交換しながら、の服に手をかけた。抵抗する素振りは全くない。
「あふぅ……はぁ…ん」
 女になったの吐息が、「どうぞ脱がして下さい」とでも言わんばかりにを誘っていた。
 1分もかからないうちには全てを脱がされていた。
 が服を脱ぐのを手伝った。
 上半身を脱がせ、締まった体に触れてドキッとする。
 下半身を脱がす時には期待で手が震える。トランクスの前に気を配りながらそっとずらすと、太そうな肉茎が勢いよく飛び出した。角度も旦那の ものより急である。早く触れたくて、口の中に唾液が溜まってくる。

 本能のままに抱き合う二人。
 長い間旦那しか知らないは、触れるもの全てが新鮮で愛しく思えた。
 肌が重なっただけで欲情が掻き立てられ、奥から泥蜜が流れ出した。
 自分で慰めるよりもはるかに容易に、受け入れる体勢が整う。
 縺れながらキスを交わし、互いを焦らしながら肌の感触を確かめた。
 それだけでの秘所は洪水を起こし、も潤滑油を滲ませた。
 我慢の限界に達した時、ようやくの秘所へと手を伸ばした。割れ目をそっと触ると、溢れていた愛液によってぬるっと滑った。
 (オナニーしていたから準備万端だな…この中に入れたらヌルヌルで熱くて、どんなに気持ちいいことか)
 最終行為を心待ちにしながら、は体の向きを変えた。の顔の上にそびえ立つ棒が存在感を主張している。
 の熟れた肉びらを開くと、ぬめった花弁がヒクヒクと切なく震えている。女の香りが鼻につき、の雄を刺激した。
 もはやは羞恥心よりも、快楽を求める方が勝っていた。
 淫らな液体を流しながらを待つ。
 の舌先がの陰唇に届いた。触れるか触れないかの手加減で色素で染まった花弁をなぞる。
「あぁっ……んあぁ…」
 は悦びに満ちた声で鳴き、性器はうねりを起こした。
 焦らずじっくり攻めようと、刺激の少ない箇所を選んで丹念に舐めとる。
 もどかしさで爆発しそうな欲望と戦いながら、は腰をよじらせた。
 昼間は健康的にテニスをプレイし、家では家庭を守る真面目な主婦が、ぐっしょり濡らして淫らに踊っている。その光景はの勃起をいつもよりも力強くさせた。
 旦那が見たらどう思うだろうか…。
 セックスに消極的だった妻が、他の男の前では淫らに誘いお○○こを舐められてよがり声をあげている。今にも顔につきそうなペニスを見て、恍惚の表情を浮かべているなんて。
 は乱れた自分の姿を客観的に想像し、ますます興奮した。
 もう止められない。
「あぁん……いやぁ…」
 がクレバスに舌を差し込むと、一層大きく喘ぐ。腰を僅かに浮かせて奥へと誘い込もうとする。
 雄の匂いがする肉茎がの理性を崩壊させた。
 下半身は痴態をさらけ出しているから、今更何をしても問題ない気がする。
 は昂ぶりを手でそっと握ると、息を吹きかけた。
 ビクンと元気よく反応する一物。
 舌を尖らせると裏筋を上から下に向かってなぞった。
 一瞬、の舌の動きが止まるのが微笑ましい。
 もっと気持ちいいご褒美を与えてもらうために、は一物を夢中になって愛した。
 この体勢では思うように舐めることが出来ず、を焦らすことしか出来なかったが、それが余計に彼の雄を奮い立たせた。
 (さん、やるな……でもこの敏感な豆を触ったら冷静でいられるかな…)
 の花弁に包まれて大人しくしていた雌しべは、充血して膨らみ顔を覗かせていた。妖しく濡れ光り、雄しべを待ちわびているように見える。
 は、唾液をたっぷり滴らせた舌でそれをくるくると舐め上げる。
「あ…あっ……だめっ…」
 の下半身に強烈な快感と痺れが襲ってくる。のペニスへの愛撫が疎かになり、腰を動かして逃げようとした。
 しかし物凄い力で押さえつけられて、ビクともしない。
「いやぁっ…」
 (すごい、強すぎる…このままではイっちゃうわ……)
「あぁぁ…さ…ん…もう…」
 絶頂への階段を昇り始めたその時、刺激がピタッと止んだ。
 は体勢を変えてを見つめる。
 息も出来ないくらいの激しい口づけを交わす。
 激しい欲情と恋心を一旦沈めるためには、この方法しか残されていない。
 の膝を割って体内へ侵入していった。
「はぁ……ん」
「う…おぉ……」
 体がぴたりと重なった時、二人は歓喜の声を漏らさずにはいられなかった。
 熱く脈打つ肉棒と、悦びの液体で満たされた淫泉。出会えた奇跡をたたえるかのように、泉には波が打ち寄せ、茎は奥深くを何度も貫いた。
 最後の瞬間を迎えるのが惜しくて、何度も動きを止めるとキスして微笑んだ。
 (ありがとう…これでもう貴方との恋は終わりにすると約束するわ……)
「もう私…限界よ…」
 正常位に戻ると、しっかり抱き合いながら二人で躍った。
 の肉壁はをきつく締め上げていき、の雄も吐き出すための準備を始める。
 交わった部分に全神経を集中させ、最高の瞬間を迎えようとする。
 目の奥で花火が飛び始める。
「あぁっ…イクっ…いっちゃ…う……」
 先に音をあげたのはだった。激しく揺さぶられながら、長い間我慢した自分を解放する。
、綺麗だよ…愛してる…」
 の言葉に反応して、の瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
 彼女の収縮を感じとったは、自身をすばやく抜き取ると、彼女の下腹部に向かって脈打たせた。
 やがて昇る朝日を恐れながら、二人は抱き合って眠った。永遠に朝が来なければいいのにと思いながら。

―――――終わり―――――

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