格闘系の私(2)  投稿: はるか 様 
 大杉から借りた本を忘れて取りに戻って来た教室は、定期的な大掃除で、新学期の始まりのように黒板が磨かれている。
 明日の日直は高瀬夏江。いつもより丁寧に書かれた文字に、やりきれない思いが募る。
 いつも何も入っていない鞄に本を放り入れると、廊下を歩く夏江の姿がガラス越しに見えた。
 他に歩く夏江の友達はいないようで、いまが最後のチャンスかもしれない。鞄を机の上に置いたまま、教室のドアを引き廊下に出ると、もう夏江の姿はない。
 俺は夏江を探しながら追いかけた。細長い廊下の突き当たりにある体育館の前に夏江がいた。重そうにドアを開けて入って行く。
『よう!格闘家』
 ビックリした顔で振り向いた夏江。
 俺は2年の時から夏江の事が好きだった。でもあいつは、レスリングで頭角を表し、市内でも名前が知られた女の子だった。もちろん校内では最も有名な女子で、言い寄る男が多いのか少ないのか解らないが、気軽に告白出来る相手ではないと思っている。
 だからと言って、夏江のご機嫌を取る為にストラップや鞄やら髪型を誉めるような事はしない。何故なら、本当の自分で勝負をしたいだけ。
 彼女になってから誉めても遅くないし、今時のチャラ男はイヤだ。
 でも、思った事を口に出す俺は、夏江に好意を持たれる訳が無い。
 無理だと思っていても告白しなければならない時もある。もうじき卒業式だから。

「その呼び方は止めて。キチンと名前で呼んでくれない」
「悪い悪い・・・なら、たわらちゃん」
 また余計な事を言ってしまった。
「拓のせいで、変なあだ名がついたのよ。許さないから」
 また、夏江が怒っている。
「そんなに、怒るなって」
 全然告白する雰囲気にならない。告白した瞬間に平手が飛びそうだ。
 前から思っていた夏江に相応しい男の条件。それは夏江より強い事。それがレスリングだけではなく、男として夏江より強い事を証明したい。でも、具体的に思い当たる物がない。せめて、今証明できる事は男の腕力。そう、腕力くらいは勝てそうな気がした。そして夏江に勝った時には告白をしたい。
「お前って、どのくらい強いの?」
「どの位って言われても・・・解らないよ」
「だってお前、レスリングで全国に行ったんだろ」
「でも2回戦で負けたし、県大会のレベルが低いかもしれない」
「でもさ、お前と戦ってみたいんだ。俺プロレスも好きだし」
「ちょっと拓、プロレスとレスリングは違うって」
 夏江の言う通り、俺はレスリングとプロレスのルールの違いは解らない。でも、ここで床に寝そべった腕相撲に切り替えて勝ったとしても、告白する気になれない。
「お前も教室の大掃除でジャージだし、調度良いじゃん」
「拓、レスリングのルール知ってるの?」
「知らないよ。でも細かいルールなんて、どうだっていいよ。真剣な試合じゃないし」
 何とかレスリングごっこに持ちこめる事が出来そうだ。ここは、サッさと戦いの雰囲気を出す為に学生服の上着を脱いで、体育館の端に投げ飛ばした。
 夏江は強いと思う。隠れて試合を見に行った時、投げ技に寒気がした。関節技は禁止されているが、あの素早い動きと筋力は郡を抜いている。決して怖くは無いけど・・・
 平然とした態度を持続する事も難しい。さわやかな笑顔を無理して作るが、いったいどのように思われているのか。
 まずは、自信満々の雰囲気を出し、かかって来るように挑発をした。
「早くやるぞ。俺がお前を鍛えてやるから、かかって来なさい」
 まさか、レスリングのポーズを取る訳にもいかず、思いついたポーズは仁王立ち。計画性の無い告白に無理が生じているのは仕方がない、分の悪い勝負には準備が大切だと思った。挑発する行為は手首をクネクネさせる自分が情けない。おまけに顔まで引き攣っていると思う・・・・
「いつでも、かかってきなさい」
 きっと夏江はタックルを仕掛けてくる。いきなり高度な技は繰り出さないと思うし、いきなり投げ技が出てきたら諦めるしかない。
 夏江が真剣な表情をしている。可愛いと思う余裕は無い。小さな猛獣が目の前にいる。
 素早い動きで俺の腰にタックルをしてきた。とっさに上体を前に倒して踏ん張るしかない。俺だってバスケットで鍛えた足腰を信じて、夏江を抱きかかえて持ち上げた。
「えっ」
 夏江のビックリした声は聞こえるが、顔は見えない。タックルは普通の女子とは思えない力だったが、以外と持ち上げた夏江は軽かった。少しだけ勝てる自信が湧いてきた。
 でも抱きかかえている子は、自分が告白したい夏江。お尻と背中に腕を回して、子供のように抱えている。
「ちょっと、拓・・・離して」
 両足をバタつかせて暴れる夏江を抱きかかえたまま、俺は両膝を折ってしゃがみ込んだ。そのまま私の頭に手を添えて、痛くないように優しく床に置いてやった。
 何とか夏江に勝てそうだ思うと顔が緩んだ気がする。そのまま気付かれないように、両手で夏江の肩を床に押し付けた。
「ほら、勝った。両肩を床に付ければ勝ちなんでしょ?」
「違う違う、勝ちじゃない。ポイントがつくだけ」
「いいよ、そんな面倒なルール、簡単なやつでやろうよ。さあ第2クールを始めよう」
 ここでゆっくり夏江の話しは聞いてられない。少し位のハンデをもらっても、夏江が損をするような試合じゃない。目的は告白する権利を勝ち取ること。
 俺はさっと立ち上がり、また、仁王立ちのポーズを取って挑発する事にした。
「さあ、どこからでもかかって来なさい」
 夏江の呼吸する音が聞こえて来る。1回目より気合の入った表情で、レスリングの構えをとり、目の前に立っている。
 キュッ!夏江の靴音が体育館に響く。
 夏江は俺の右足を取ると一気に持ち上げた。
 ちょっと待て夏江。
 片足でよろける間もなく倒されると、頭を床に強打した。後頭部の激痛が鼻腔まで伝わり、立ち上がる気力さえ奪われそうになった。気が付くと夏江が馬乗りになって両肩を床に押し付けていた。
「拓のルールでやると、今回は私の勝ちね」
 可愛い夏江の顔が憎たらしく見えた。告白しようと思った気持ちが怒りに変わりそうだった。
「痛って〜な、少し加減くらいすれよ」
 頭を撫でながら立ち上がった俺は、歪んだ顔をしてルール変更を告げた。
「やっぱり、このルールじゃ面白くないな。次からは負けましたって言うまで戦うのはどう?お前だって得意技があるんだろ?」
 体重差のある夏江は以外と軽くて小さい。思い切って倒されてから、動きを封じれば何とかなるかもしれない。ただ不安なのはどうやって負けを認めさせるかだ。
「私の関節技は痛いわよ。泣いても知らないからね」
 間接技はルール違反でしょ。
「よし決まり。最後の第3クールは『降参』で勝負を決めよう」
 今度のファイティングポーズはプロレスラーの真似。誰だか忘れてたけどこんな感じかな。
 夏江との距離は約1メートル半、以外と近い。
 靴音さえ鳴らさず右足を取った瞬間に肩で俺を押しつけて来た。夏江は本気だと感じたが、すでに倒され、このままあっさり関節技を決められそうだ。やっぱり抱きかかえて動きを封じるしかない。地面から離れた夏江は案の上軽かった。でも、ひっくり返して押さえ込まなければ、かなり危険だ。
 夏江を抱きかかえたまま半転し、床に押し付けようとしたが、隙間をぬって両足を俺の胸に当て蹴り上げて体を引離してきた。
 そのまま反転し立ち上がろうとした夏江の両肩を、慌てて床方向に引っ張り、そのまま後ろから抱え込んで仰向けに倒した。バランスを失い宙に舞った夏江の足に両足を絡みつけ、動きを封じてやった。
 夏江の自由な左腕が見える。上体を起こし手首を握り締めて、危険回避は終了した。無我夢中で押さえ込んだが、ラッキーにも夏江の右腕は、俺の体の下に潜り込んでいる。
「ちょっと拓、離して。だって、こんな体勢はレスリングにも、プロレスにだって無いよ。全然試合になってないよ」
「ん〜・・・そうかもしれない。でもお前が降参するのなら、離してやってもいいよ。それが今回のルールだろ」
 これからが困った。夏江が負けを認めなければ打つ手が無い。
「早く、負けを認めな夏江」
「やだ、私は負けてない」
 夏江は頑固で負けず嫌いな性格は良くわかっている。
「俺は技も知らないし、かけ方も解らない。だから、押さえ込む事しか出来ないんだ。ここまで抑え込んだら俺の勝ちでいいだろ」
「いやだ。私は負けなんか認めない」
 全く負けを認めそうにも無い。スッキリはしないけど、一応告白の条件は自分の中で成立したような気がする。
「本当に夏江は負けず嫌いだな」
「そうよ。負けるのが嫌いなの」
 俺の左腕に、夏江の体温が伝わる。付き合ってほしい女の子に、こんな体勢で告白出来た奴はいない気がする。
「なあ夏江。何で勝負を挑んだか解る?」
「そんなこと、わからない」
「実は俺、お前の事が気になっていたんだ。お前より強い事を証明しないと告白も出来ないと思って。それで勝負を挑んだ」
「なあ、だから負けを認めろよ」
 チラッと見た夏江の顔に表情はなかった。
「なぜ、その理由で私が負けを認めないとダメなの。拓がキチンと勝てばいいだけでしょ」
 キツイ口調の夏江は俺の告白なんて気にしていない。勝負に勝つ事だけを考えている夏江をこのまま開放しても良いと思った。
 でも、夏江はキッパリ俺が勝てばと言い切り、ここまで勝負に拘るなら、俺も夏江との交際に拘りたい。でもどうやったら勝てるかが、まだ思い浮かばない。
「わかったよ。でも、俺・・・技なんか知らないし。分の悪い勝負だから、最後のルールを変更してよ。俺が勝ったら夏江は俺と付き合う。いいでしょ」
「えっ・・・」
「それとも、俺に勝つ自信がないとか?」
「なに言ってるの。私が勝つに決まってる」
「そう、じゃあ俺も手段は選ばない。必ず夏江に降参と言わせてみせる」
「私だって手段を選ばない。肋骨や腕の骨折は覚悟してよ」
 ちょっと待て。お前は猛獣か。まさか本当に折る訳がない。
 もし夏江に折られたなら諦めるか。
「夏江は猛獣だね。絶対に途中で逃げる事は認めないよ」
 根拠の無い強がり言った。
「わかったわ」
 俺は握った拳を夏江の腹部に置いて考えた。このまま押さえ込んでも俺に勝ち目はない。
 夏江の髪からシャンプー匂いとジャージからは清潔な洗剤の香りがする。いくら鍛えたとはいえ、夏江の体は柔らかい。
 男としてこの体勢は猛獣に変化しても何ら、不思議な話しではないし、ちょっと我慢が出来なくなってきた。
 もし失敗したら・・・骨を折られるか、首を締められて殺される。
 さあ、猛獣対妄獣の対決。
「じゃあ試合再開だね」
「早く抜け出さないと手段は選ばないよ。絶対降参させるから」
 握り締められた拳を開いて、ゆっくり下腹部へと手を伸ばし、ジャージの入口でゆっくり手を入れ様子を伺った。
  「ちょっと、拓・・・なにするの?」
 信じられない様子をした顔が一変し、一瞬泣きそうな顔をすると大声で俺の鼓膜を切り裂きそうとする。
「拓、やめて」
 曇るような小さな声で謝った。
「好きだよ、ごねんね」
 指先をジャージの中に潜り込ませると、そのまま手の平全体で、優しく秘部を包み込んだ。中指で擦ると自然に割れ目に沿って下着が食い込んだ。
 暴れる夏江を必死で捻じ伏せるが、可哀想で顔を見る事が出来ない。指の節を上下させ、休む事なく蕾を集中的に優しく擦った。
 無言の抵抗をする夏江。下着が完全に食い込んだ秘部は全く感じる様子もない。直接触れるしかないと思う。でも犯罪に等しい行為に罪悪感と迷いが出る。
 迷いながら引き抜いた手を下着の中へ入れてみる。夏江は抵抗もせず、辱めに耐えているようだ。サラサラする薄めのヘアーに邪魔もされず、触れてはいけない蕾まで辿りつくと、渇いた花弁が閉じたまま、指先を拒んでいる。
 直接触れた蕾を強めに擦るが、夏江は猛烈な抵抗はしない。チラッと見える顔は、唇を一文字に引き耐えている。
 犯罪を犯している自分・・・なぜ夏江は抵抗しない。
「夏江。早く降参してよ。これじゃまるで、敵に捕らわれた女スパイの拷問だよ」
「・・・・・」
 渇いた花弁と萎む蕾に手を焼き終わりにしたい気持ちもある。腕力勝負でも勝てず、犯罪行為をしても、潤わせる事も出来ない。
 しかし、心と裏腹な男の本能が、犯罪行為に卑怯な手を混ぜる行為を脳裏に浮かばせた。大杉がおもしろ半分でくれた、ローションがポケットの中にある。
 これを使っても感じてくれなければ、夏江に半殺しにされても仕方が無い。
 ズボンのポケットから小さな子瓶を取り出した。
「これ、ローション。大杉からもらったんだけど・・・」
 苦痛の表情で夏江が口を開いた。
「ちょっと、やめて」
 俺は子瓶のフタを片手で開け、夏江の秘部へと潜り込み、汗ばみ始めた蕾に塗り込んだ。
 ローションは人工的に蕾を潤わされた。大きく円を描いて指を擦り付けた。
「好きだよ・・・夏江」
 ちいさな声で、ごめんねと繰り返して言った。
 俺には女性を喜ばせるテクニックは持っていない。出来る事はただ優しく執拗に擦り続ける事しか出来ない。
 突然夏江が猛烈な抵抗を始めた。
 握り締めた左腕を抜こうと暴れ出した。絡めた脚をバタつかせ、力を振り絞って抵抗して来る。握られた左腕を強引に真上へ伸ばし、そのまま脇腹に近づけてくる。何をしたいのか解らない。
 握り締めた手が少しづつ抜け始め、危険を感じて下着の中に潜り込んでいた腕を引き抜き、夏江の腕を押し戻した。
 何とか束縛した体勢を維持する事が出来た。
 喜ばせたい秘部に再び手を潜り込ませた・・・
 潤ったままの蕾を優しくコネると、萎んだ蕾が少し大きくなり、クリクリと回す感触が変わってきた。成熟するように大きさを増す蕾を感じ、優しく強めに擦った。
「あっ・・・」
 夏江の感じ始めた声が聞こえると、罪悪感が少し薄れた。
 乱れ始めた夏江の呼吸が、花弁に触れても良いと錯覚させ、指を入れ込むと渇いていた泉は蜜で溢れていた。
 やっと卑怯な手を使って溢れさせた蜜を、大切に指ですくい蕾に盛ると、指先で何度も往復させて弾いた。
 声にならない喘ぎが呼吸に混ざり、紅潮した横顔が愛しく思える。しかし、夏江が顔を背けてしまう。
 握り締めた左腕を開放し、頭を包みながら首筋に抱き寄せた。夏江の頭を優しく撫でながら、自分の頬を頭に添えた。
 勢いを増して蕾を擦り付けると、首筋に熱く乱れた吐息を吹き付けられる。夏江の体が小刻みに震え出し、声を押し殺している。とめどなく泉から蜜が溢れ、お尻の方まで流れている。
 夏江の全身が弱い痙攣を起こしている。震える夏江をさらに責めたい。強めに蕾を擦り潰しすと、震える小さな声を出しながら体を大きく仰け反らせ、俺の手首を握った。
 夏江がイッてくれた。
 痙攣の止まらない太腿からお尻にかけ、上下に優しく擦りながら繰り返して言った。
「好きだよ。でも、ごめんね」
 夏江の体を包み込み。背中を撫でる手を腰に回し下着の上から横になったお尻を優しく撫でた。
 しかし、気が付かなかった感触が手に触れる。夏江の下着にヒモが付いていた。
 脱がせていないジャージに隠された下着の色は解らないけど、左側だけに小さく結ばれている。格闘系の夏江には想像がつかない下着と思えたが、夏江を魅力的な女性に仕立ていると思う。
 ヒモを引っ張るとスルリと解け、露になった薄めの柔らかいヘアーに触れた。
「もう、やめて」
 ようやく震えの治まった夏江が、再び蕾を責められる事を拒んでいるように思えた。
  「大丈夫。もう、そこには触れない」
 告白するために始めた戦いで、夏江を指で戒めて昇り詰めさせた。
 これだけで十分満足しなければならないはず。でも、溢れる泉には指を埋めていないし、時々当たった胸やキスも・・・
 でも、夏江は絶対に犯さない。性的な欲求を満たしていない自分の股間は怒涛のように夏江の泉を求め、欲望を抑えようとしても、反り立っている。
 この事は夏江に知られたくない。だから夏江の体に触れないように距離を取っていた。
 再び秘部に手を潜り込ませると、蕾の上を通り過ぎて泉に辿りつく。溢れる蜜を囲う花弁を開き、指先だけを挿し入れ、泉の入口と纏わりつく花弁を弄んだ。
 ヒモが外れた下着の内部に隙間が出来、以前より自由になった、手首を使いながら、根元まで指を挿し込んだ。大きく掻き回すと淫靡な音が、静まり返った体育館に浮きだって聞こえる。
 順番も滅茶苦茶だけど、夏江にキスをした。唇と唇を擦り合わせた後に舌をゆっくりと差し込み、奥に逃げた舌を追いかけ絡ませた。  夏江の小さく発する声は自分の口の中に吸い込まれて行く。
 泉を大きく掻き回しながら、徐々に上壁を中心に強く擦り付けた。微妙に反応するお腹が可愛いい。Tシャツの裾をジャージから引き抜き、柔らかい肌に触れながら、ブラの上から乳房を揉み上げた。ブラを上に引き上げ、下から乳房を持ち上げ尖らせている乳首を揉み摘む。
 より強い快感を夏江に与えたい。泉の中に2本の指を入れザラツク上壁を丹念に擦り続けと、指の隙間から蜜が溢れ出てくる。
 夏江が突然顔を背けて唇を引き離した。
「お願いだから、もう止めて」
 媚びるような小さな声を出した。
「もう少し我慢して」
 愛しく言葉を返した。
「おかしくなりそう。お願いだから止めて」
 まだ、やめられない、前より高く昇り詰めてくれないと。
「好きだよ・・・夏江」
 自分で快感を与えられる全ての事をやりたい。夏江の舌に絡み、2本の指で上壁を擦りながら蜜を掻きだす。最後に出来る事は不器用な親指で蕾を擦り潰すだけ。
 夏江は一気に昇りながら体を痙攣させ、静かな体育館に震える喘ぎ声を放った。
 キスで声を塞いだが。震える声が口の外に漏れる。
 激しく震える体で、俺の太腿を2度叩いた。
 ポンポン
 何も言葉をかけず受け止めた合図『降参』
 放心状態の夏江を床に寝かせつけた時に、突然ドアを蹴飛ばす音が鳴り響いた。
 ドン・・・
 音が鳴っても、直ぐに入って来ない。俺は慌てて夏江の服装を整えた。夏江は起き上がる事も出来ないようだ。
 ガラガラガラ・・・
 大きな音を立ててドアが開けられた。
「こら松山!お前らこんな所で何をやっとる」
 入口を見ると、我がバスケットボール部、鬼の顧問、中村先生だった。俺は挙動不審になり、なおさら慌てて答えた。
「レスリングの練習です」
 声を震わせながら答える自分が情けない。
「高瀬は大丈夫か」
「・・・・・」
 夏江は返事をしない。
「早く高瀬を玄関まで連れて行って、風に当ててやれ」
「ハイ」
 もしかしたらばれていない。少しだけ安堵感が広がった。
 俺は夏江を背負うと足早に体育館を後にした。

              ★

 私は、今春で定年退職する、老いぼれた理科の教師。
 長年バスケットボール部で、家族を犠牲にしてまで指導して来た思い入れのある体育館を目に焼き付ける為に来た。
 体育館に近づくにつれ、人の気配を感じた私は、入口の隙間から覗き込むと、レスリングごっこをしていた拓が、頭を床に叩きつけ苦しんでいた。あの高瀬を相手にしたら、首の骨くらい簡単にへし折られると思ったが、相手が拓なので安心して理科室に戻った。
 拓は知らないだろうが、高瀬は去年の夏からワシの居る理科室に相談に来た。
「先生、あの〜相談があるんですけど」
 相談の内容は、女子高校生には良くある恋の相談だった。
 鬼の顧問として知られているワシに、恋の相談とは理解が出来なかったが、話しを聞くと直ぐに合点がいった。
「私は少しだけ有名だから交際なんて出来ないけど、恋くらいはしても良いよね」
「それは問題ない、ドンドンしなさい」
 夏江の口から出てきた名前は松山拓人だった。私の教えるバスケットボール部の教え子だ。誰も近づこうとしない鬼の住む理科室へ、毎日のように来る夏江は可愛くも思えた。
 しかし、出る話題は必ず、拓・拓・拓・拓・拓
 拓が部活で食べる弁当には何が入っているとか、拓は何色が好きなのとか、おまけに拓の好みの女性のタイプまで教えれという。そんな事は知らん。
 お願いがあると言えば、拓の写真を撮れという。図々しくも写真の構成まで指示する有り様。コートで試合をする拓を撮れ、ベンチに座る拓を撮れ、弁当を食べる拓を撮れ、拓以外の人は写真に入れるなと。結局ワシが試合中に拓の写真を撮る事になった。
 出来上がった3枚の写真を手渡すと嬉しそうな顔をして見つめ、データをUSBに入れろと言う。たった1枚しかないデータは夏江と友達の後ろに小さく拓が写っていた。
 数あるお願いの最後には、拓を先発で試合に出させろと、まるで姉さん女房丸出しのお願いだった。
 夏江は拓が好きと言うより、心底惚れている。
 だから、レスリングごっこの相手が拓なら心配はしなかった。夏江の強化合宿では、男子大学生を相手に投げ飛ばしている。
 いくら腕力が強い男でも、素人で夏江に勝てる高校生はいない。
 夏江を動物に例えたら女豹、素人相手なら弄ばれる子猫。
 もちろん、相手が拓でなければ、夏江も相手にはしないだろし、他の男なら、私が止めに入っている。
   しかし、考えれば別の不安要素もあった。拓と触れ合えば、思いの強い夏江は、引火された花火の如く・・・・
 高校生の分際で何を仕出かすかと慌てて戻り覗くと、夏江はすっかり女になって、声まで出しながら、ポンポンと脚を叩いておる。
 ワシはそれを見た瞬間、役者になろうと思った。これ以上続けられて誰かに見られても大変だ。入口のドアを蹴飛ばして、言い訳作りに5秒待ってやる事にした。
 ドン・・・
 1.2.3.4.5.結構長かった。真剣な表情を作って
「こら松山!お前らこんな所で何をやっとる」
 挙動不審な拓と床に張付く夏江。拓に背負われてワシの前を通ると、夏江はベロを出しやがった。
 本来なら退学処分だが、せめて理科室に呼んで最後の説教と行きたい所だが、震え上がる拓とニコニコ笑いピースをする夏江が目に浮かんだ。
 あいつらと一緒にこの学び舎を後にする者として、胸にしまって置くとしよう。

            ★

 私の上下のジャージの中は乱れきっていた。ずり落ちた下着とずり上げられたブラから乳房を出したまま、拓に背負われている。
 拓はかなり必死に玄関へ向かっている。
「ねえ、拓、中村先生が来て良かった。もし来なかったら私、犯されてた」
「バカ、絶対にそんな事はしないって」
 うそだ・・・

―――――終わり―――――

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