雪舞う神戸での逢瀬 (投稿:七瀬涼香 様) 名前変換
 インターネットの普及によって、見知らぬ男女の様々な恋模様が繰り広げられるようになった・・・・・
 私、のような平凡な一主婦でも運命の悪戯によって遠く離れた異性と知り合い、心の交流を重ねる事もできるように―――
『逢ってみたいな・・・と。』
 彼からのその甘い囁きが私の中に眠っていた女としての情念を呼び覚ました。
 長く心の奥底にひっそりと仕舞われた女としての輝きが、顔や声も知らない存在であるによって放たれることになろうとは・・・・
 彼に恋をしている・・・・そんな甘美な自覚が私の心の奥底で、女としての情欲や情念の炎をゆらゆらと滾らせ始めていた。
(逢いたい、逢ってみたい・・・)
 そう私の心が叫びを上げ続け、そしてずっと喘いでいた。
 何度も何度も頭の中で繰り返された言葉の羅列をずっと長い間、心に閉じ込め封印しきた・・・彼から『逢いたい』そう言われる事をきっと待ち望んでいたと思う。
 彼からの予期せぬ甘美な唐突の申し出に私は心揺さぶられ、自分の想いを閉じ込める事などできないと覚悟を密かに決めていた。
 日々繰り返される妻、そして母としての責務の重さを痛感しながらも、ただ流され埋もれていく事への心の葛藤が私の中にはずっと燻り続けていたようにも思う・・・・・
 神戸に暮らす平凡な主婦である私と、遠く離れた仙台で暮らす自営業の家庭ある男がこんな風に実際に逢う確率なんて奇跡に近いはず。
 でも私はその奇跡を信じ、賭けてみたい・・・・一人の女としての私がそう願っていた。
 例えそれが後戻り出来ない結果を生み出す事になったとしても後悔はしないだろう・・・そんな予感めいたものが胸の内でざわめいていた。
‘来週末、神戸に僕が逢いに行くから神戸駅前のホテルのカフェで待ち合わせできないかな?‘
 彼からの申し出を受諾すると言う事・・・・それは互いの家庭にもしかしたら波風を立てる事になる、そんな意味合いが含まれている。
 もしかしたら逢ってしまう事で、もう後戻りできないところまで気持ちが走ってしまうかもしれない・・・・
 それでも私は芽生えた女としての情念や情欲を抑える事はできないと素直にそう思った。
 ベランダで家族の洗濯物を干しながら私は夫の白いワイシャツを見つめ、秘密を持つ事への罪悪感と一人の女としての滾る熱い想いの狭間に揺れて心乱されていた・・・・・

* * *

 その日は朝から冷たい雨が雪へと変わり、空から舞い落ちる白い雪花が弾む私の心に淡い彩を添えて静かに舞っていた――――
・・・・・・・私の火照った想いを鎮めてくれるかの様に。
 私が暮らす三宮から乗ったJRの車内の座席に腰を据え、ようやく私は今から起こるであろう平凡な日常とは異なる世界へと足を踏み入れる事への戸惑いと慄きを少しずつ蘇らせていたようであった。
 果たしてこれで良かったのか・・・・今から戻った方がいいのでは・・・逸る想いを断ち切るように私は車窓に流れ行く景色をぼんやりとした意識の中で瞳に映した後、静かに眼を閉じてみた。
 街の景色は何も変わらずそこにあった・・・女の情念に目覚めた私はこれから何かが変わってしまうのか・・・・
 変わる事は罪悪では無く、新たな自分を発見する心の扉なんだと無理やり自身に言い聞かせ、外の冷気で曇った窓に火照った掌を当ててみた。
 ひんやりとして気持ちいい感触が掌から脳髄を刺激していった・・・・
 週末に開かれる高校時代の同窓会への出席と言うもっともらしい妻の嘘を夫は見破っていたかもしれない。
 嘘をつくとパチパチと何度も瞬きを繰り返してしまう私の癖をもしかしたら夫は気づいていたかもしれない・・・
 きっと逆の立場だったら、私は出席を咎めただろう。
 敢えて疑う素振りを見せなかったのは信頼されていると言う事の表れなのか・・・・見て見ぬ振りなのか・・・・そんな想いを巡らせながらも私は恋する人のまだ見ぬ姿にも想いを馳せていた。
 そっと外した結婚指輪を見つめながら私は妻と言う名の枠から‘ひとりの女、‘へと外れる心の準備に徐々に陶酔していった――――
 今日の私の装い、真っ白なコートの下に纏った黒の膝丈のフェミニンなカクテルドレスや揃えてみたピンクの口紅とマニキュアは彼好みかしら・・・・・
 自慢の栗色のロングヘアーを似合ってると彼は褒めてくれるかしら・・・・
 期待まじりの淡い女心が私の中で固い蕾から徐々に満開の桜の如く美しく花開いてゆく。
 入り乱れる想いを秘めて列車は目的の駅へと静かに入っていった・・・・
 彼とは駅前にある洒落た外観のホテルのカフェで待ち合わせていた。
(もし私の外見を気に入ってもらえなかったらどうしよう・・・)
 そんな不安感に不意に襲われながらも、温かいカフェオレにほっと一息ついていた。
(彼に知らせた私の服装や髪型で一目で私と解ってくれるかな・・・・)
 私達は互いに顔や本名を知らない・・・・今までは敢えて知る必要が無かったのだ。
 日々の退屈な変わり映えしない生活や悩み落ち込んだ時に相談でき、優しさに溢れた言葉をかけてもらえる・・・・・それだけでも平凡な私の日常に眩い光を彼は射し込んでくれた。
 例えそれが虚構であって、真実を伴わない偽りのものであったとしてもそれはそれで良かったのである。
 彼が与えてくれる精神的安らぎが今の私には必要であり、失いたくない大切なものでもあったから・・・・・

* * *

 約束の時間が迫り、心臓が口から飛び出してしまうんじゃないかと思うくらいにドキドキ感が昂ぶり始めたその時、一人の男性がまっすぐに私に近づき歩みを止めた。
さん?です。初めまして・・・」
 私の妄想の中で創造されていったイメージ通りの人だった。聞いていた年齢よりは弱冠若くは見えたけど。
 優しげな少し下がった目尻が彼の素朴な印象をより鮮明に醸し出していた。
 初めて聴いたはずの声が何故だか懐かしさを含んで私の耳に心地よく響く。
「あっ・・・はい。です。遠い所を逢いに来てくださりありがとう・・・」
 彼の眼を正視するのが何だか恥ずかしくて・・・俯き加減でそう答えていた。
「今日は殊に寒さが厳しいみたいですね。仙台も雪が舞ってましたが、神戸も雪で少し驚きました。」
 そう笑顔で話す彼の声をふわふわした夢見心地の気分で聞いていた。
「朝降っていた冷たい雨が雪に変わってしまって・・・でも仙台の方がもっと寒さ厳しいんでしょうね。」
「そうですね・・・でも雪もまた素敵ですよ。それ以上にさんが素敵な方で良かったけど・・・」
 例えお世辞でも嬉しいと心から思った・・・・
 二人は至極自然な形で他愛ない会話を紡ぎ、自然と打ち解けていった。
 カフェを出た二人はタクシーで南京町へと足を運んだ。
 丁度、春節祭が催されており色鮮やかな獅子舞の躍動的な踊りが逸る二人の心を盛り立てているかの様だった・・・・・
「美味しいと評判の中華のお店があるんですが、ランチをそこで如何かしら?」
「ええ・・・いいですよ。僕、中華料理って好きなんですよね♪」
 彼にはどこか少年の様なやんちゃで可愛らしい部分が垣間見えて、思わず口元が緩んでいるのが自分でもわかった・・・・
 馴染みの店の扉を開けると祭りのせいか思いの他店内は混み合っていた。
 それでも私たちは空いた席を見つけ、美味しい中華に舌鼓を打った。
「このチンジャオロースー、美味しいなぁ・・・さすがにさんのお勧めのお店だけのことはあるね。」
さんに美味しいって言ってもらえて、私もほっとしました。私って味オンチなとこあるから・・・」
 クスっと笑みを浮かべて首をすくめた私に熱い視線を送るに戸惑い思わず視線を逸らしてしまった・・・・
 期待を裏切らない美味を堪能した私たちは、雪舞う外に出て言葉少なめに程よい距離を保ちながら中華街をそぞろ歩いていた。
 寄り添い歩くにはやはり人目がどうしても気にかかっていた・・・
 そんな私の気持ちを察してか大人の心遣いをしてくれる彼の心根が私の慕情に仄かな灯火を点けた。
「これからどうします?もしさんの時間が許されるのなら、もう少しさんと過す時間を貰えたら凄く嬉しいんだけど・・・」
 そう遠慮がちに話す彼の瞳を真っ直ぐに見つめながら・・・
「ええ・・・わたしも・・・さんとこのままお別れするのは寂しいです・・・」
 自分の中に芽生えた女の情念が震える私の背中をそっと押してくれた・・・そんな幻影に私の胸に秘めた想いが舞い降りる真っ白な雪の様に体内に降り積もっていった。
 拾ったタクシーの車内で彼はずっと私の冷たくなった手を握り、彼の体温で徐々に温かさを取り戻していった掌と私の中に潜む女の劣情が連動するかの様に火照り始めていた。
 車はトワイライトの灯り煌く六甲の山間をゆっくりとトレースしていった・・・・
 瀟洒な洋館の老舗のホテルに辿り着いた頃には舞い降りる雪は一層力強さを感じさせていた。
 カーテンが全開にされた部屋の窓の外には真っ白な雪の華がはらりはらりと天から舞い落ちていた。
「・・・・・ずっとこうされたかった。さんが好きです・・・」
 そう呟く私を彼は優しく抱き寄せ、清き水の香のするキスを私の桜色の唇に優しく降らせてくれた――――
 部屋の薄明かりの中から見る窓の外の純白の穢れ無き白い粉雪はまるで白い花びらのように美しく、私の瞳を妖しく濡らしていった・・・・・・
 彼の生暖かい舌先が私の咥内に差し込まれ、ねっとりと絡み合う・・・・・
 舌先がまるで生き物の如く艶かしく蠢き、私の粘膜を陵辱してゆく。
 彼の湿った舌が私の首筋を濡らしながら、左手が大きく開いたドレスの胸元へと侵入し、その大きな掌で緩急を以って乳房を揉みしだいていくにつれ私の口からは甘く切ない喘ぎが吐き出され、脳内を徐々に痺れさせてゆく。
 その甘美な刺激に私の乳首は硬くしこり始め、ジンジンと感度を増していった・・・・
 不意に指の腹で硬くなった蕾を擦られ、「あうっ・・・むふん・・・」思わず悦声が漏れる・・・・
 私の感度のツボを心得てるかの様に執拗に蕾を弄んでいく彼。
 敏感な部分を責められ、私の花弁からジュンっと淫汁が溢れ出していくのを感じていた。
 彼が甘く艶っぽい声で耳元で囁いてくる・・・・
「ベッドにいこう・・・が欲しい。愛しいよ・・・」
 私はコクリと頷き、彼の厚い胸元に顔を寄せて背中に両腕を絡めてみた。
 彼はお姫様抱っこで私をベッドまで運び、再び熱く激しく私の口唇を貪り、片手でスカートをたくし上げワインカラーのショーツの中に指先を滑り込ませてきた・・・・
 蜜壷からはねっとりとした愛液が溢れ、太腿に温かい雫をツーっと糸の様に垂らしていた。
、感じてくれてるんだね・・・こんなに濡らして・・・可愛いよ。」
「いやっ・・・言わないで・・・恥ずかしいぃ・・・」
 彼はクチュクチュと淫靡な音色を奏でる私の秘部に長くしなやかな中指を抜き差ししながら私の反応を楽しんでいるかのようだった・・・・
 指先で蜜孔を嬲られながら、片方の掌で私の白い乳房を揉まれたまま桜色のしこった乳首を舌先でねっとりと舐られる・・・・
 それだけで私はカラダの根幹から湧き上がる女としての喜悦に抗うこと無く切ない喘ぎを上げ続け、啼き続けていた。
 久しく感じていなかった女の性(さが)が今新たに呼び覚まされ、本能のままに陶酔し我を忘れ去っていった。
のその愛らしい口唇で僕のものをしゃぶって欲しいんだ・・・」
 私は快楽に喘ぎながらも彼からの切ない要求にコクンと頷き、濡れた瞳で彼を見つめていた・・・
 彼のエラの張った熱く脈打つペニスを私は淡い桜色の口唇の中に優しく含み、舌先を硬くなった肉茎に絡めながら深く喉奥まで咥え込んでいった・・・・・
「ううぅ・・・いいよっ・・・・・・感じるよ。好きだ・・・ああぁ・・・」
 私は恋する人の、感じながら少し眉間に皺を寄せる顔を上目遣いで妖しく見上げながら愛しい肉棒を丹念に舐め上げていった――――
 彼の陰嚢を片手で優しいタッチで揉みながら、彼の射精感が高まり迫っているのを感じていた。
「はっ・・・むぅんん・・・もう駄目だ・・・、イキソそうだ・・・ああ・・・イクよっ・・・あうぅぅーーーっ」
 彼の溢れ出す濁汁を私は愛しそうに喉を鳴らしながら一滴も残さず飲み干していった・・・・
 舌先に拡がる苦味をも慈しむ気持ちで私は余韻に浸りながらベッドに横たわった。
 その後彼は年齢をも感じさせない逞しさですぐに回復を見せ、何度も官能の甘い世界に私を連れ去り、久しく味わっていなかった女である事の悦びや奥深さを心の隅々まで感じさせ、満足させてくれた・・・・
 恋する喜びに一度でも浸った事があるものなら、その幻影が放つ甘美な誘惑に惑わされないで生きて行けるほど人間は強くはないと思う・・・・少なくとも私は秘密を持つ事でひとりの女として輝きたかった。
――― せめてマリッジリングが外されたひと時だけでも本能のままに姿態を曝し、ひとりの女を全身に纏っていたかった ―――

―――――終わり―――――
 
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