イケナイ恋愛 夜のパーキングで 投稿: 沢口ヒロ 様
ちゅるんっ、とのちいさな口に含まれる、白いうどん。
ふっくらとした唇に触れると、はいつも目を潤ませる。強く抱きしめて長くキスをした後、彼女はしばらく距離をおく。舌を絡ませる深いキスをした後、彼女は逃げるように背を向けた。
彼女自身興奮してしまい、理性を保てなるのを怖れているのだ。
キスをしているときの、が鼻から吐く熱い息と、からだを通して伝わる胸の高鳴りと火照りが、彼女の性欲が沸き上がってきていることを証明していた。しかし、セックスは拒み続けている。彼女とはたったの二度しか、からだを重ねたことがない。
外気温との差で、窓は結露している。暗い闇しか見えないが、雪はまだ止んではいないだろう。山では今晩、吹雪くかもしれない。とはスキー旅行の帰りに、パーキングエリアで軽く夕食をとっていた。
同じスキー客だと思われるのが何人かいる。
たちと同じような学生の恋人同士で来ている者もいれば、女ばかりである集団、家族連れといろいろだ。
彼らは同じように、それなりに高い値段のわりに安い味しか出せない、雑然とした食堂で、彼らなりに楽しんでいるふうである。
汚れた床、腰の位置をずらすとがたつく椅子、テーブルには落書き。恋人どうしか、片想いの馬鹿が書いたのだろう、ハートの中に男女の名があった。
冷えたからだがうどんの湯気に暖められたからか、何度か鼻から垂れそうになるのをハンカチで拭った。も、鼻をすすりながら食べている。
彼女とつき合い始めてから、もうすぐ二年が経つ。
が、水泳部の後輩であったに告白されたのは、彼の高校の卒業式の日であった。
桜の咲く前の、まだ冬の寒さの残る春先。は透き通るような真っ白い頬を赤く染め、そのときも少し鼻をすすっていた。
つき合って一ヶ月ほど経つと、はに気を使ったのか、もしくは女友だちに何か言われたのかもしれない、夜、彼の部屋で初めてからだを開いた。
は今でもはっきりと覚えている。
初めて目にした彼女のはだかは、まさに雪のように白く滑らかで、雲母がきららと光るように輝いて見えた。
そして、そんな清楚なからだとはまったくの異質な、黒く艶めかしい海草が、下腹部を隠していた。
は興奮に我を忘れそうになりながらも、丁寧に、そして優しく、のからだをベッドに寝かせる。
しかし、彼女は両脚を固く閉じ、牝の磯をかきわけることを拒否し続けた。 足を開かせるだけで大変であった。
は幼児をあやすように、ときにはおどけて、彼女の心とからだをほぐそうと努め、ようやくの女の部分を目にすることができたのだ。
初めて見た秘所は、とてものものとは思えないほど生々しい、強いにおいを発している肉の割け目であった。鬱蒼と茂った黒い海草をかきわけてたどり着いたその秘密の場所は、熱く真っ赤に潤み、ぐねっと収縮の蠢きを繰り返している。さながら生きている赤貝のようだ。
彼女はずっと両手で顔を隠し、
「そんなところ、見たらだめぇ」
泣きそうな声で訴え続けた。
はそんなの言葉を無視し、貝肉をじっと見つめ、指で丹念になでた。
しかし、彼女の蜜壷は、なかなか濡れてこなかった。
もまたと同じく、このときが初めての性交であったのだ。
友だちの話やアダルトビデオで何となくは知っているつもりであったが、繊細な女のからだの知識は、まだないに等しい。
早く自分のパンパンに張った淫棒を、彼女の蜜穴に突っ込みたくてたまらなかったは、ついに面倒くさくなり、
「初めてのときはみんな痛いんだから、我慢しろよ」とに命令するように言い放ち、欲棒の侵入を宣告した。
「いや、怖い」
彼女は弱々しく首を横に振ったが、は構わず彼女のちいさな肉孔に太々といきり勃ったものの先端をあてがい、一気に腰を突いた。
ぱんッ、との下腹との尻肉が勢いよくぶつかり、大きな音を立てた。
同時に、
「ぎゃあッ!」
は絶叫し、からだを弓なりに反らせた。
は、彼女の苦しみなどに気を使う余裕がなかった。それほどにの胎内が、を快楽の泉に浸らせたのだ。
彼女は痛がっていた。ちいさな肩を震えさせ、すすり泣いていた。
しかし、彼女の意志とは裏腹に、淫口はのアイスキャンディーを食わえ込み、中へ、中へと引き込んでいく。
処女のものとは思えぬ、その淫魔のごとき泥濘の海で、の分身はすぐに果ててしまった。自らコントロールする術を失い、は処女の泉に、牡の粘液を吐き出してしまったのだ。
急速に萎えていく欲棒をの割れ目から引き抜いたとき、はようやく彼女の痛みに気づいてやれることができた。
処女の血が、白いシーツを赤く染めていたのを目にしたのだ。
それはギリシア神話のアドニスの流した血と同じ色であり、アネモネの花のようであった。
二度目の性交では、さらに失敗をした。
初めてのときの痛みからか、は長い間からだを許さなかった。
そこでは酒の勢いを借りて、半ば無理矢理犯したのだ。
当然のことながら彼は後悔した。
そして自らを罰するように、その後二度と、にセックスを迫っていない。
今回の旅行でもしなかった。
食事が済むと、は化粧室に寄ってくるといって小走りで駆け出した。
は一人、車に戻る。
ゴミ箱の脇を通ると、ゴミがたくさんあふれているのが目に入った。
エンジンをかけ、冷えた車内を暖めようと暖房をいれたとき、ふいに携帯が鳴る。
江尻那津子という一つ年上の女子大生からであった。
彼女とは二ヶ月前、に内緒で参加した合コンで知り合った。
たちが合コンの会場である飲み屋についたときに、すでに女の子たちのグループは全員そろっていた。始めにの目に留まったのは、座っている女の子たちの中で、他の子と比べて頭が一つ飛び出ていた子である。
自分と並んでも、変わらないくらい背が高いだろうな、とは思った。
彼女はグロスを塗ったきらきらと光る唇に、メンソールの細い煙草を咥えている。
は、彼女の口元にちいさなホクロがあるのに気づいた。
そのホクロがどうにも可愛らしくて、ちらちらと視線を送っていたら、
「エロボクロっていうのよ」
彼女は細い指で口元を指して、そう言った。
これが彼女との初めての会話であり、その後ようやく、互いに自己紹介をした。
江尻とはその日のうちに、ベッドを伴にした。
若い性欲が溜まっていたは、勢いよく江尻を押し倒したが、年上の彼女はまだ女性経験の浅い幼い男を、優しく制した。
その夜、は江尻との密戯を通して本当のセックスを知り、にしてしまった過ちを思い出し、悔恨の念にかられた。
江尻のエロボクロのある口で若竿をしゃぶってもらっているとき、
「ごめん」という言葉が、彼の口からこぼれ落ちた。
「他の女のことを、思い出したの?」
江尻は猛る牡茎から口を離し、唾液の糸を指で絡めながら聞いた。
あっ。
は、今自分が何を言ったのか、初めて気づく。
「ごめんなさい」
江尻は、の竿を手の平にのせて、指先でちょんちょんと突きながら話を続ける。
「彼女のことかしら。うまくいっていないの?」
が答えに窮していると、江尻は、ふふ、と笑った。
「奪い取ってやりたくなっちゃったわ」
「え」
が頓狂な声を上げる。
「冗談よ」
もう一度、江尻はちいさく笑った。
電話の声を聞いて、彼女の、冗談とも本気とも取りづらい、女の誘う目を思い出した。
「彼女とは、うまくいった?」
今回、旅行に誘ったらどうかと提案したのは江尻であった。
彼女とはよく電話をするようになっていた。話題はもっぱらとのことについてである。
彼女はおせっかいであるのか、面倒見がいいのか。それとも自分より未熟な二人の恋模様を、さながら週刊誌のゴシップを読むように楽しんでいるのか。
は江尻と話していると、心が安らいでいくのを感じていた。の隣にいるよりも、気を楽にしていられたのだ。
「いや、まだダメみたいです」
ゆっくりでいい、自分がつけたの疵が癒えるまで待とう、はそう自分に言い聞かせていた。
けれども、すぐそばにいる好きな女を抱けないのが辛かったのは事実だ。
「そう」
ちいさく、短い声。自分の心中を察し、慰めてくれているようにには聞こえた。
ふいに、江尻に会いたくなった。
そして、彼女ともう一度、一緒にベッドに入りたいとも思った。
「いいわよ」
江尻ならそう言ってくれるだろう。
しかし、は言葉を飲み込んだ。
電話を切ると、車の横にが立っていたのに気づく。
ドアを開けると、
「電話の相手、だれ?」
彼女は静かに訊いた。
暖まっていていた車内に、外の冷たい空気が入ってくる 。
江尻のことは、には話していなかった。どこか後ろめたさがあったからだろう。
だから、今も言葉を濁してしまう。
すると突然、はの口をふさぐように、唇に唇を重ねた。
は驚いたが、彼女はさらに口を大きく開き、彼の口を食べるように覆ってくる。うねうねと軟体動物のような彼女の舌が、の舌に絡みつき、口腔をかき回した。
は両手で愛おしそうにの頭を抱え込み、彼は自分の手を彼女の腰に優しく回す。
「んぐっ、うんっ」
の熱い鼻息とくぐもった声が、車内に満ちていった。
互いの唾液が混ざり合い、ぴちゃぴちゃと淫靡な音を立てる。のいやらしい舌はの唇の裏に忍び込み、歯茎をれろりと舐め上げた 。
彼女は彼の唇を吸い上げて、一度口を離す。つう、と互いの唇同士が糸を引いた。
彼女は大きく息をつく。との目が合った。彼女の目には、今まで見たことのないほど、強い光が帯びている。
の視線はの下腹部へと下がっていく。
彼女の細い指がかちかちと、彼のベルトを外し始めた。
「何をするつもり?」
が訊くとは、
「決まっているでしょう」
はのズボンをパンツと一緒にずり下げると、まだ力なく頭をもたげたの肉茎が露わにされた。
の竿に、がそっと手を触れる。
冷たくて気持ちが良い。
柔らかい手の平がを優しく包み込み、上下に擦り始めた。
自分でするよりも格段に大きい快感が、の脳を蕩けさせる。肉の棒はすぐに膨れ始め、固く隆起した。
するとは、先汁に潤んだ鈴口を舌先で突く。
「んあぁ」
の口から、女のような声が上がる。
はの顔を見上げた。そうして、にっこりと微笑んだ。
可愛らしい無垢な少女の顔と、淫らな女の顔が同時に見えた気がした。
かぶっていた皮を指で剥き、かり首をれろれろと舐め回す。赤い亀頭がつるんと口に含まれた。
は大きく膨れ上がった怒張を、ちいさい口いっぱいに咥えると、頭を動かし始める。
生暖かく、柔らかい少女の口内でしごかれる肉棒。
だらだらと唾液を滴らせ、すっぽりとのどの奥まで含んできた。ぬちゃぬちゃと淫靡な音が車内に響く 。
「むぅんっ」
彼女は息継ぎをし、鼻を鳴らす。苦しそうな声。
しかし、彼女は休もうとしない。
懸命に奉仕する彼女の瞳が、うっすらと涙を湛えているように見えた。
は口をすぼめ、の昂ぶりを唾液とともに、ずずっと音を立てて吸い上げた。頬の裏肉が、肉竿に張りつく。
の髪を優しくなでた。ふいに、彼女の姿に江尻が重なる。
かりッ、と音が鳴った。最初、には何の音なのかわからなかったが、すぐに痛みが股間に走った。
「ぐうッ」
はくぐもった声をもらす。
が彼の太茎から口を離した。どろりと唾液が唇から垂れる。わずかに赤い色が混じって見えた。
は自分の息子に刻まれた歯形と、うっすらと滲んだ血液を目にする。の破瓜の血を思い出した。
「江尻那津子って人も、これを舐めたんでしょう?」
は静かに、じっとの目を見つめた。
なんで、江尻のことを知っている?
の胸に、不安が満たされていく。
「彼女から私に、電話があったのよ」
は、泣きそうな声になっていた。瞳が涙でいっぱいになっている。
はせまい車内で、窮屈そうにズボンを脱ぎ始める。
官能の滲みがついたショーツに指を引っかけて、するりと下ろすと、彼女の秘所を隠しているはずの黒い海草が、きれいになくなっていた。盛り上がった恥丘には、赤い肉を覗かせる、唇のような割れ目があるだけである。
彼女は恥ずかしそうに目を伏せて言った。
「セックスを拒んでいたこと、反省しているわ」
頭を丸めるように、彼女は化粧室で、下半身の毛を剃ってきたのだった。
「他の女のところになんか、行っちゃいや。お願い、別れないで」
は頭を屈めてシートに足を乗せ、のからだに跨った。
彼のすぐ目の前に突き出した赤い傷口を細い指で自ら開く。
そして、男の楔に腰を落としていく。
過去の恐怖を噛み締めて、懸命に男を迎えようと耐える。その表情は、の胸を強く騒がせた。
そのため肉の凶器は、少女をさらに苦しめようとするかのごとく、より巨大化していくのである。
少女の痛みと、官能の悦び。
二つの感情の混じり合った悲鳴が、冬の夜空に高く響いた。
―――――終わり―――――
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