ジェット気流に抱かれて 投稿: 紅紫 様 ![]() 5日ぶりに戻ったマンションのエントランスに穏やかな朝の陽の光が差し込んでいた。 キャリーケースを転がしながらホールに入ってきたに、出勤を急ぐ住人が怪訝そうな一瞥を投げてすれ違っていく。 郵便受けを確かめ、乗り合わせる人のいない上りのエレベータを7階で降りると、長い外廊下の一番端にの部屋があった。 キーを回し、重く乾いた音とともにドアのロックを解いて中に入ると、荷物を框に立てかけながらゆっくりした動作では赤いローヒールを脚先から抜いた。 “終わっちゃった…” さっきから何度となく頭の中で繰り返した台詞を、今度は小さな溜息とともに口にしながら短い廊下を歩き、寝室の側の扉を開けるとそのままベッドに仰向けに身を投げた。 小花模様のカーテンの隙間から朝の陽射しが僅かに差し込み、天井から壁のクロスにかけて描かれたひと筋の明るい帯をぼんやり眺めながら、ほんの3時間ほど前の密やかな戯れを想い出しては再び身体が熱くなってきたのを感じた。 “やだ、また…” 彼はもう事務所の席に着いた頃だろうか。 久しぶりの東京のオフィスで部下に囲まれているに違いない。 半年前までの上司であるの屈託のない笑顔を想い、それを懐かしく迎えているであろう同僚の女子社員に少しだけ嫉妬しつつも、自分は特別な存在なのだということに優越感を覚えながらの身体に濡れた興奮が甦ってきていた。 枕の位置を動かして身体全体をベッドの上に上げ直すとひとつふたつ大きく息をはいてみるが、深夜便の飛行機の中であまり眠れなかったせいもあって身体の神経が鋭敏になっていることが自分でよくわかる。 の指が動き回っていたあたりが熱くなってむず痒いような感覚がをそそのかし始めた。 もう一度息を大きく吸ったの手がワンピースの大きな前ボタンを裾から外していくと裏地が滑って薄い肌色のストッキングに包まれた形の良い膝とふくらはぎが淡い光の中であらわになった。 腰までボタンを外した指先がそのままゆっくりと下がって、熱くなっている部分を確かめるように触れるとストッキングの上からでも濡れているのがわかった。 “やだ、もうこんなに…” そう思いながらも指は周りを掃くように勝手に動き始めている。 “あん…” 誰もいない部屋で小さな声が思わずこぼれると、脳裏にはのまなざしと囁きが甦り、彼の指の動きをなぞるように同じ動作に引き込まれていく。 狭い空間で充分には満たされなかったものを補うように、いつもより性急な行為におぼれていく自分を感じて、それがさらに欲求を煽った。 “さん…” 無意識に脚の指先に力が入って、の頭の中は時間が逆戻りしたように彼の面影に包まれていた。 深夜にシンガポールを発ったSQ998便は、漆黒の中を順調にフライトを続けていた。 離陸後2時間もすると食事の片付けも終わり、常夜灯だけになった機内では化粧室に立つ乗客も絶えて、低いエンジン音だけに包まれる時間帯になる。 単身赴任先で半年ぶりのに逢うためにが休暇を取ってシンガポールを訪れたのが木曜日の午後で、それからの3日半をふたりで過ごしてから日曜日の深夜、一緒に成田行きの機上の人となったのである。 3日も離れずに一緒にいたことはこれまでのふたりにはなかったことであったが、過ぎてみるとあっという間のできごととしかお互いに思えず、夜が更けても眠りにつくことができなかった。 いつもそうするように、機体の最後尾の2人掛の位置を確保したは隣にがいることに、この上ないひとときの幸せを感じながら、減っていく残り時間を惜しむようにの手を握って耳元でつぶやいた。 「終わっちゃったね。」 「うん…、でもすごく楽しかった。ありがとう…大好き…」 ふたりで一緒に薄いブランケットに覆われたままこころもち上目遣いになって応えたを見て、彼女の膝の上でつながれていたの右手に力が入った。 そしてそのまま、その右手はのワンピースの前合わせをくぐりながら膝の内側へ伸び、器用にボタンを外していく。 「だめ…」 両手での右手を押さえただったが、ボタンを3つ外される頃にはその抗いも形だけとなっていた。 「だめだってば…、あっ」 が耳にキスをすると、の両手には思わず力が入った。 「大好きだよ…」 「わたしも…」 エンジン音にかき消されて、そこは耳元での囁きだけが特別な相手にだけ届く透き通った密室であった。 の手のひらの動きとともに、きちんと揃えられていた美しい脚が徐々に開き、3本の指先が左脚の付け根に届くとの両手から力が抜け、の手の上に置かれているだけとなった。 ストッキングに締め付けられたショーツのフリルを撫でながら、指先がだんだんと深いところへ降りていく。 思わず漏れそうになる声を抑えてはブランケットを顔のところまで引き上げながらの耳元に小さく訴えた。 「だめ…」 その訴えを無視するかのように力強い指先は2本になって奥深くへ這っていく。 シートに指先が届くまでになると、ストッキングの上からでさえの蜜があふれているのがわかった。 「もうこんなになってるよ」 「いやっ、恥ずかしい」 しかし、ことばと裏腹にの左手はのズボンの上から確実に彼を捉え、その興奮を確かめるように手のひらでゆっくりとまさぐり始めていた。 「さん、好き… 大好き…ああ…」 の指先は的確にを探り当てると、今度は一度戻ってからストッキングをくぐって差し込んできた。 圧力から開放されたショーツのフロントフリルが柔らかく開いて手のひらで弄ばれている。 伸びた指先はさらさらした液体にまとわりつかれながら、小さな突起の愛撫を続け、そのスピードは計ったように徐々に速くなっていく。 「だめ、ねえ…」 「…」 「お願い!…」 「可愛いよ…」 「いやっ、だめっ…」 は左手の中にを感じながら、まるで自分の中にいるような錯覚に陥っていた。 「ああっ、…」 「…」 「好きっ…、大好き…、ああっ、…」 「、おいで」 「ああっ、感じるっ」 「、…」 「もうだめ…」 「おいでっ、…」 「だめ、もう…いっちゃう…」 「可愛いよ、」 「さん! 好き! だめ、いっちゃう!いっちゃう!」 「おいでっ!」 「ああっ、いく、いく、いく…いくっ!…」 の耳たぶを小さく噛みながら囁くの声に震えながら、は頂点に達した。 ストッキングを履いたまま、その縫い目の真下にある自分の敏感な部分を中指と薬指で円く掃くように触りながら少しずつ高まっていくのがいつものの方法だったが、今日はその手順を必要としなかった。 仰向けになったまま、腰を浮かせてストッキングを下ろすと、つま先から片方ずつ静かに脚を抜く。 半日ぶりで直接空気に触れた脚が深呼吸をしたようだった。 深夜の機内でにされたように、彼のお気に入りのショーツの上から自分を愛撫すると蜜がまた噴き出すようにあふれて薄い布地を濡らした。 下着の上からでさえ、指の動きに合わせて低くこもった濡れた音がして、それが余計に自分の気持ちを煽っていく。 わざともどかしい時間を経て焦らしたほうがより高く達することができるのを教えてくれたのはだった。 このまましていてもすぐに達しそうだったが、今日のは自分をもっと苛めながら果てしなく高みへ上りつめてみたい衝動に駆られていた。 ワンピースの袖から腕を抜いて膝をおもむろに立てながら両脚を開き、胸に触れていた左手を蜜壷にあてがってみると乾いていた指先がヌルっとした感触に触れて新たな興奮が生まれた。 時々にされるように、ショーツの脇からその指先を入れると暖かい蜜がとめどなくあふれて谷間を伝い垂れているのがわかる。 尻の穴と会陰を撫でながらそっと壷へ中指を入れ、右手をショーツの中へ差し込んで充血したクリトリスにあてがった。 どれほど淫らな姿であるかを想像しながら指の動きが自然と早くなっていく。 狭い部屋に淫靡な濡れた音が響き、たまらず声が出た。 「ああーっ、いい…」 脚が大きく開いて腰が浮いた。 “たまんない…” 脚のつま先に力が入り、握るように内側へ曲がって一気に高まりに近づく。 “もっとして…、もっと” にされているような感覚におぼれながらの背中が大きく反った。 “いっちゃう! いきそう…” 両方の指の動きが、これでもかというほど一段と激しくなった。 “ああーっ、 あああーっ、” “だめっ、いきそう、いきそう!” “いやっ、 いく、いく、いく、いく… いくっ!” 脚の指先をきつく握り締め、背中を大きく反らせたまま、は痙攣しながら激しく果てた。 ―――――終わり――――― 女性のための官能小説・目次 |