理想のセックス 1 この激しい痛み、まただ…。 期待した方が馬鹿だった。 直美はベッドの上で眉を顰めながら浩介の挿入を必死で耐えていた。 裂けるように痛く苦痛以外の何者でもない…。それはみしみしと音を立てて入ってくるようだった。 1ヶ月ぶりに恋人の浩介と体を交わらせた。風邪で薬を飲んで大人しく寝ていると頭がフワフワして、夢の世界にいるような感じがした。ちょうど生理が終わったのも重なってか、朝起きて隣にいた浩介の寝顔を見ると急にムラムラしてしまった。 セックスしたい・・・。 直美は久しぶりの性欲に少し期待していた。今日なら気持ちのいいセックスができるかもしれない。 期待とは裏腹に、前戯はほとんどなく、軽く胸と乳首を触り下着の中に伸びた爪を持つ指を入れて激しく動かす。さっきまでの性欲がさっと引いていくのが分かった。 それでも最後の挿入にわずかながら期待を寄せて足を開いた。 「もっと優しくして」 そう言っても挿入を止めることなく奥の方にズンズン突き進んでくる。 苦痛に顔を歪めるがまるでそれを楽しんでいるかのように、腰を動かし始める。腰を引こうとするがぎゅっと肩を押さえつけられて今にもつりそうな程痛い。 「はっ、はっ、はっ・・・」 浩介だけが荒い息を出して感じているようだ。 これでは恋人の体を借りて自慰行為をしているのと変わりないと思う。「俺ってSなんだよね」 そう言っていた彼を思い出しながら途方にくれていた。 直美は、付き合った当初から浩介のセックスに全て満足していた訳ではない。 浩介が生まれ持って不器用な性格と手先の持ち主であるのは、付き合う前から何となく分かっていた。 しかし自分もそれまで処女でいたため、セックスとは所詮こういうものだと思ってしまっていた。 回数を重ねるごとにオルガズムに達することもできるようになった。彼のテクニックが上達したというのではなく、ペニスの根元に自分で感じる部分を擦り付けて無理やり達する方法を見つけたのだと思っている。 逆に浩介は、自分はSだからという理由で、段々愛撫に対して手を抜くようになり荒々しく体を重ねてきた。今時、高校生でももっとマシなセックスをしているかもしれないのに。 またいつものように足をぎゅっと閉じて擦り付けて何とか達しようと努力する自分がいる。 ‘性の不一致’という言葉が頭に浮かび、以前はそれを理由に離婚するなんて大げさなと思っていたが、今なら心から同情できると思った。 もう浩介とはセックスするのは止めよう。こんな思いをする位ならオナニーしている方がマシだ。 沢山の男性と付き合ってきた友達の江里子に相談すると、ある程度予想はしていたが、 「体の相性が合わない男とは別れてしまえばいいのに。私だったらそうするな」 とはっきり言われてしまった。 「江里子は体の相性ってあると思うの?」 「そりゃあると思うよ。性格が合う、合わないってあるみたいに、エッチの仕方も同じように合う合わないもあるでしょ。」 「でもそれってエッチの仕方を変えたら合うようになるかもしれないってこと?」 「そうねー。でも難しいと思うよ。性格だって根本的な部分はなかなか変えられないしね。」 セックスが合わない相手と付き合い続けるのは間違っているのだろうか。 一人になるともやもやと考えこんでしまう。 それでも直美は浩介と別れることができなかった。 それは一人になるのが怖かったという理由が大きい。セックス以外では小さな不満も多少はあるが、浩介には優しい面も沢山ある。それに恋人がいるという肩書きを持っているのは安心感に繋がった。恋人がいるのだから全く‘モテない’女というわけではないだろう。 next→ 愛しの彼といつもより♡なHを 女性のための官能小説・目次 |