ストップ&ステップ 1
とはもうすぐで付き合って一年になる。
二人は昨年入社した同期であり、部署が同じであることからすぐに打ち解け、やがて付き合うようになった。
は営業事務で2年目の割には仕事を正確に早く、積極的に行っている。
も何事にも努力して失敗を恐れない姿勢が認められ、大事な取引先の営業を任されるようになった。
仕事では良いパートナーの一人、そして仕事が終わると食事を楽しんだり趣味について語り合い、互いを癒し合う時間が持てる。
容姿もそこそこで、周りが羨むような二人の間には何の問題も悩みもないように思えた。最初のうちは・・・。
「くぅっ・・・」
薄暗い部屋の中でテレビのバラエティ番組の音と、男のくぐもった声が聞こえる。
「駄目、そんなに深く入れちゃ・・・」
「わ、分かってる・・・」
切羽詰ったとまだ余裕がありそうなの声。
二人はの家のベッドで裸で抱き合っていた。今正に、アレの最中である。
「うぅ・・・はぁっ・・・!」
の上で再びがうなり声を上げた。そして徐々に動きが止まり、最後にはの上にぐったり圧し掛かった。
「重いー!」
体格の大きいに乗られると小柄なには辛すぎる。はの腕をつねって抗議した。
「痛てっ・・・」
「どう・・・?」
「ごめん、イッちゃった・・・」
は申し訳なさそうにに謝ると、体を離してふてくされた。
「・・・気にしないで。あたしは抱き合うだけで満足なんだから」
「悪いな・・・」
「別に浮気しようなんて思ってないから大丈夫だよ」
が笑いながら冗談っぽく言った。
「何だよそれ・・・」
(いっそのこと、体だけ浮気してくれた方がを満たしてくれるので楽かもしれない―。)
は自暴自棄になり、心にもないことを言いそうになった。
はたから見るとお似合いのカップルにも悩みがあった。
それはが「早漏」であること。
初めてのセックスはに挿入しようとした瞬間に果ててしまった。最初はが興奮し過ぎているからだと思い、は特に気に留めてはいなかった。しかし、その後も幾度となく数分のうちに終了、酷いときは三擦り半の状態だったこともあり、が早漏であることに気付いた。
が早漏になった原因は、前の彼女とセックスした時に酔っていたのか、入れてすぐに出してしまったことが始まりだった。彼女に「え・・・?もう!?」とがっかりした顔で言われたことで落ち込んでしまい、それ以来頑張ろうとすればする程、すぐに射精してしまいそうになるのだった。
はとのセックスで絶頂を迎えたことが一度もない。
体がまだ火照った時に終わってしまうのは、全く辛くないと言えば嘘になる。でもそれ以上に、が落ち込み自信をすっかり無くしているのを見る方が辛かった。
のためにも何とかして早漏を治すことが出来たらいいのに、とはインターネットで対策法を調べたり、掲示板で相談をしていた。
ある日、がネットサーフィンをしていると、気になるサイトを見つけた。
そこには 『1泊2日の合宿で早漏改善のお手伝いをさせて頂きます』 と書かれてあった。
いかにも怪しいサイト。しかし、主催者は某大学の医学部であることを知り、は詳細ページをクリックした。
合宿のメニューは、セックスの悩みを専門とするスタッフによるカウンセリングや講習会、実技指導などだった。
合宿に参加した人の改善率は95%というデータを見て、は半信半疑のままサイトを隅々まで熟読した。
(そんな合宿に行くなんて気が引けるけど、少しでも望みがあれば・・・)
このままずっとセックスの度に気まずい思いをする位なら、2日間だけ恥ずかしい思いをした方が救われるのではないかとは考え、に相談することにした。
「こんなサイトを見つけたんだけど・・・」
がどういう反応を見せるか、不安を抱えながらサイトを開いた。いきなりこんなものを見せられて、怒り出したり不機嫌になってしまうことも予想していた。
「へぇー、すごいな・・・こんなのがあったんだ。料金は幾らかかるの?」
意外にも興味を持ってくれたようで、は一先ず安心した。
「それがね、結果を研究のデータに使わせてもらいたいから、合宿の費用はいらないって。自分の交通費だけでいいみたい」
「マジで?それなら行くのもいいかもな・・・」
「ほ、ほんと!?」
こんなにも上手く話が進むとは思わなかったは喜んだ。今までは悩んでいるだけで、カウンセリングを受ける等の行動に移せなかった二人だが、これで解決できるかもしれない。
は早速合宿の申し込みの手続きを済ませた。
◇ ◇ ◇
合宿当日、
とはバスに乗って指定された場所まで向かっていた。
合宿にはパートナーも同伴するのが望ましいと書かれてあったため、
も参加することに決めた。
「ごめんな。せっかくの土日に付き合わせちゃって・・・」
「いいよ。あたしも色々勉強しておきたいから」
ばつが悪そうに謝るには笑顔で答えた。
バスから降りて、徒歩で10分の所にその建物はあった。XX大学 臨床心理センターという看板が立てられてある。二人は少し緊張しながら受付へと足を進めた。
始めに健康診断と問診、カウンセリングが行われた。早漏になったきっかけ、普段の性生活について細かく質問を受け、二人で考えながら答えた。
検査の結果は、
は肉体的な機能には問題がなく、過去に上手くいかなかったことがトラウマになっているのだろうという診断が出た。
優しいスタッフの対応により、最初のメニューで二人の不安と恥ずかしさは軽減された。
カウンセリングが終わると、他の参加者も一緒になって、早漏改善方法の講義を受けた。二人の他に4組のカップルが参加しており、まだ学生と思われる若い人達から中年のカップルまでいた。
講義の内容は勃起や射精のメカニズムや、マスターベーションによるトレーニング法、早漏の人のためのセックス方法などが説明された。
「ちょっと生々しいね・・・」
とは苦笑いしながらも、真剣に聞き入っていた。
何とか実践できそうな内容だったので、帰ってからが楽しみだと
は期待に胸を膨らませた。そして一日目のメニューは無事に終了した。
ご飯を終えて用意された部屋に二人で戻ると、はいきなりに抱きついた。驚いているの唇を奪い、舌を滑り込ませようとする。
「だめよっ・・・」
「夜の間ならいいだろ。あんな話聞かされたらやりたくなってきた・・・」
止めようとするを無理やり押し倒そうと、ベッドまで追い詰めている。
「ほら!明日は体力を消耗するから、今日はエッチは控えて下さいって言われてるじゃん・・・」
は講義で言われたことを必死で伝えると、
は大人しくなった。
「分かったよ・・・」
「明日までの我慢だから、もうちょっと頑張ろうね」
ぽんぽんと
の肩を叩いた。
翌日は合宿最終日。12時には終わることになっている。
しかし「最終講義、実践」というメニューの内容が気になる。一体どんなことをさせられるのだろうか。
全員が集合し終わると、5組のカップルは綺麗な女性スタッフにある部屋に連れて行かれた。そこには5つの大きなベッドが設置されていた。
「皆さんにはこのベッドの上で、昨日講義で説明した早漏改善のための練習を行ってもらいます」
スタッフが話すと、みんなそれぞれのパートナーと顔を見合わせて動揺していた。
今まで沢山の合宿を行っているのだろうから、参加者のこういった反応には慣れているのだろう。スタッフが淡々と説明を続ける。
「でも心配しないで下さい。カーテンを締めますから、他のカップルには見えないようになってます」
(カーテンはあるけれど、同じ部屋の中で知らない者達が混ざって一斉に練習!?)
もも不安を募らせる。
「どうしても出来ないのなら、こちらのメニューは受けなくても構いません。しかし、受けた方がその後の改善率は高いというデータがあります」
どの参加者も早漏について本気で悩んでおり、本気で治したいと考えていたので、そんな事を言われたら参加せざるを得なかった。
「ではカップルごとにベッドに上がってカーテンを閉めて下さい」
カーテンで仕切られたベッドの上で、それぞれのカップルが緊張した面持ちで次の指令を待っていた。
ベッドの上には男性向けのアダルト雑誌や液体が入ったボトルが置かれてある。
「男性は下半身裸になって下さい。上半身も脱いで良いですし、女性も裸になった方が望ましいです」
予想はしていたことだが、いざ脱ぐとなると気恥ずかしい。男性たちは気まずそうにズボンと下着を脱いだ。
は上半身も脱ぎ全裸になった。みんな下半身は情けなく縮こまっていた。
「これから男性はペニスを勃起させて下さい。パートナーが手伝うか、そこに置かれてある雑誌などを利用して下さい」
生々しい指令に、
とは羞恥心の他に何とも言えない気持ちが沸きあがっていた。それは他のカップルも同じだった。
「ねえ、どうする?」
が小声で囁く。
「・・・じゃあ、も裸になってくれないか?」
明らかに困っている
に
は優しくキスをして言った。
「ごめんな、我がまま言って。こんな状態でさ・・・の見ないと出来そうにない」
は恥ずかしそうに小さいままの状態の股間を手で覆った。
「分かった・・・」
このままでは練習できないことを悟ったは、脱ぐ決心をした。ジャケット、ブラウス、スカートを脱ぎ、とうとう下着姿になった。
お揃いの薄ピンクの下着を身に着けて顔を赤く染めているを見ると、の下半身に熱が篭り始めた。海綿体に血液が急速に流れ込み、徐々に持ち上がってくる。
はに抱きつくとブラジャーとショーツを脱がせた。こんな特殊な状況で見るの裸はいつもより眩しく、興奮をかき立てる。白い乳房に手を当てて思いっきり揉んでやろうとしたその瞬間、
「はい、みなさん、準備できましたか?セックスしたくなるかもしれませんが、もう少し我慢して下さいね」
スタッフのアナウンスが流れて、思わず体を離した。タイミング良く言われて、どこかにカメラでも仕掛けられているんじゃないだろうかとは思った。
でも恥を全て晒す覚悟でここまで来た。昨日のカウンセリングでは、他人には決して触れられたくない部分を洗いざらい話して楽になった。
今更監視されていたとしても、大げさに嫌がることではない気がする。この会場にいると、そんな異様な雰囲気に包み込まれてしまうのだった。
「ではこれから、女性は男性のペニスを手で刺激します。この時に、スタート&ストップ法を行います。男性が射精感を感じたらストップと言って、刺激するのを止めてもらって下さい。興奮が治まったら再び刺激を再開して下さい。これを10分間繰り返してもらいます」
準備が終わると、いよいよ練習の開始だ。このスタート&ストップ法を繰り返し練習することで、激しく興奮しても射精を我慢することが出来るという。
「慣れないうちは、射精してしまっても気にすることはありません。不安な方は優しく動かして、なるべく早く止めてもらうようにしましょう」
スタッフの説明を聞きながら、頭の中でイメージする。
「各自始めて下さい」
開始合図と共に、はのものを見ると、いつもと同じように猛々しくそそり立っていた。強い刺激を与えないように優しく握って、上下に擦り始めた。
「あぁ・・・」
数十秒も経たないうちにが呻き声をあげた。
「大丈夫?」
はの表情を伺うと手の動きをゆっくりにした。もどかしい刺激がを襲う。
「うあ・・・ストップ」
の合図を聞いてはすぐに手を離した。刺激を受けた熱い猛りは、静脈を浮き上がらせドクドクと脈打っていた。普段のセックスでは、が早いために、手コキやフェラチオなどは行わないようにしている。加減が分からないので、も出してしまわないかとドキドキしながら愛撫をしていた。
の興奮が治まると、「スタート」と合図をし、再び
がペニスを握って動かす。
「無理しないでいいから、早めに言ってね」
は気遣うように優しくの先端を撫でたり、握ってしごいた。
周りのベッドからも時折、男の低い声が聞こえてくる。自分達と同じように、男性が勃起したものを女性に弄られて快感を得ていると思うと、は秘所が熱く火照るのを感じた。かかとをぎゅっと股間に押し付け、蓋をするかのようにして我慢した。
(やだ・・・これはただののための練習なのに・・・)
こんな状況で淫らに反応してしまう自分の体を、は恥ずかしく思った。
「10分経ちました。次のステップに進みます」
第一ステップを終えたことを知ったとはひとまずホッとした。
「頑張ったね」とが言うと、快感にひたすら耐えていたに少し笑顔が戻った。
「さて・・・次の練習ですが、少しきつくなることを覚悟して下さい」
スタッフの言葉に、会場はシンと静まり返った。
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