海に抱かれて 2 その2日後、約束通り翔さんが旅館の近くまで迎えに来た。隣には何故か絵里も立っている。 あたしは嬉しいことがあるとすぐに顔に出てしまうため、翔さん2人で遊びに行くことが絵里にもばれてしまったのだ。 「じゃ、彩加、楽しんできて」 「はーい」 車に乗り込み去っていく絵里を見ると、少し寂しそうな顔をしていた。 「絵里ちゃんどうしたの?」 「暇だから見送りに来たって」 「ふーん…」 「好きな人と上手く行ってないのかな…」 「へえ。何かあったのかねぇ」 まぶしくて目の奥がツーンとする位の青い空。波も穏やかで今日は絶好のダイビング日和らしい。ダイビングスポットに着くと、2人共すっかりハイテンションになっていた。平日のせいなのか、周りに誰もいなかった。 「人が少なくて初心者でも潜れるところをずっと探してたんだ」 「そうなんだ」 「彩加と2人で潜りたかったから」 「そ、そんなこと…。誰にでも言ってるんでしょ」 内心はとても嬉しかったが試すように言ってしまった。 「はぁ。俺ってそんなに軽く見えるのか」 「見えますよー」 車の陰で水着の上にウェットスーツを着込む。 体験ダイビングの時と同じように注意事項をしっかり聞かされた。 「彩加を危険な目に合わちゃいけないからな。でもいざという時は助けるから安心して」 「はーい」 「じゃあ、行くよ」 浅瀬から少し深いところへと進んでいく。 翔さんに手を引かれて水中の世界へ移行してゆっくりと沈んで行った。 水の中では宇宙空間にいるようにふわふわと漂う。幻想的な世界の中、翔さんの隣を離れないように水中を散策した。海中の景観は素晴らしく綺麗で夢の世界にいるようだが、隣にいる彼のことが気になって仕方ない。 泳いでいると翔さんがこっち来てと合図している。すぐ傍まで行くと、向かい合ってフォークダンスをするように両手を繋がれた。そのままじっとこちらを見詰めてくる翔さん。心まで射抜かれるような視線から目を反らせずにいた。 ふいに、この世に2人だけしか存在しないような気分になった。しばらく見詰め合うと、翔さんは体をぴったりくっつけて来た。ウェットスーツ越しに感じる筋肉質で逞しい胸板、そして下半身にある男を象徴するもの…。 ・・・ブクブクブクブク・・・ 激しく抱き合ったあの夜が鮮明に思い出されて、体が熱くなり呼吸が乱れてしまった。 (・・・落ち着け・・・------) 翔さんに大丈夫?のサインを送られたので、何とかゆっくり呼吸を整えて、手で‘OK’と合図した。 会えなかった日はいつも考えずにはいられなかった。 (・・・翔さんにとって、あたしとのセックスなんて些細な出来事だったんだろうか-------) 浅瀬まで来ると重力が戻って、タンクを背負っている体が一気に重くなった。立ち上がることができなくて張った状態のまま上陸してしまった。 何とか起き上がってレギュレータとゴーグルを外すと、あたしの視界は全てが翔さんになっていた。 「ん!?」 次の瞬間、翔さんに唇を奪われてしまった。 (-----人に見られちゃう・・・--------) 濡れた舌が侵入してきてあたしの舌を探るように動き出す。それと同時に自分の中心がじゅん・・・と疼くのを感じた。 このままホテルにでも連れて行かれて、彼の望むままに抱かれることを想像する。きつく唇を吸い上げられ、息をする間もない位の激しいキス。逃がさないという感じで強い力で舌を絡めてくる。戸惑いながらも体は反応し、頭の中はあの夜交接した記憶でいっぱいになる。 冷たい唇が互いの熱い吐息と摩擦のせいで熱を帯びてきた。 「んんっ・・・はぁ・・・」 息継ぎの際に、熱のこもった淫らな吐息が漏れてしまうのを翔さんもきっと気付いているだろう。キスの催淫効果と酸素不足のせいで、体から力が抜けてへなへなと倒れこみそうになる。 ちゅっ・・ちゅっ・・・じゅっ・・・ ここが海岸なのも忘れて、二人で唇を吸いあった。 「翔さん、あたし・・・」 (-----抱いて欲しい------) 何と言えば良いのかも分からなかったが、訴えかけようとした。 「・・・そんな目で見られたら我慢できなくなる・・・早く車に行こう」 ←back next→ 愛しの彼といつもより♡なHを 女性のための官能小説・目次 |